胃瘻の瘢痕が原因で発症した急性胃軸捻転症に対し腹腔鏡下に整復した1例

症例は68歳男性で,8年前に脳出血を発症し,以降寝たきりであった.その際,内視鏡的胃瘻造設術を施行されたが,6年前に胃瘻を抜去された.施設入所中,吐血を主訴に当院に緊急搬送され,上部消化管内視鏡検査にてMallory-Weiss症候群と診断された.さらに,胃体部の捻転による著明な狭窄を認め胃軸捻転症と診断し,内視鏡的整復を試みるも不可能であった.内科的治療にて捻転を解除できないため,腹腔鏡下に手術を行った.手術所見では,胃瘻造設部の胃前壁と腹壁との間で索状物を形成し,それを軸として横行結腸が反時計回りにとり巻いて内ヘルニアをおこしていた.胃体部大彎が横行結腸に牽引されて胃小彎より頭側に転位し,...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 47; no. 9; pp. 477 - 483
Main Authors 上野, 陽介, 藤田, 博正, 矢野, 公一, 衛藤, 英一, 樋高, 克彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2014
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2013.0221

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Summary:症例は68歳男性で,8年前に脳出血を発症し,以降寝たきりであった.その際,内視鏡的胃瘻造設術を施行されたが,6年前に胃瘻を抜去された.施設入所中,吐血を主訴に当院に緊急搬送され,上部消化管内視鏡検査にてMallory-Weiss症候群と診断された.さらに,胃体部の捻転による著明な狭窄を認め胃軸捻転症と診断し,内視鏡的整復を試みるも不可能であった.内科的治療にて捻転を解除できないため,腹腔鏡下に手術を行った.手術所見では,胃瘻造設部の胃前壁と腹壁との間で索状物を形成し,それを軸として横行結腸が反時計回りにとり巻いて内ヘルニアをおこしていた.胃体部大彎が横行結腸に牽引されて胃小彎より頭側に転位し,捻れていた(長軸性捻転).横行結腸を正常の位置に戻し,索状物を切離し手術終了した.本症例のように胃瘻造設後の瘢痕が原因で胃軸捻転症を発症した例は極めてまれであり,検索したかぎり本邦では4例目の報告例である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2013.0221