転移性肝腫瘍と鑑別が困難であったmFOLFOX6施行中に出現した肝偽腫瘍の1例

症例は45歳の女性で,直腸癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術,D3郭清を施行した.pStage IIIaであり,術後補助化学療法としてmFOLFOX6を施行していたが,9コース施行後の術後半年目の腹部造影CTで肝S5/8,S4に境界不明瞭な低吸収領域を認めた.MRIなど画像検査で,肝転移の可能性が否定できなかったため手術を施行した.手術所見では,S5/8を中心に局所的な鬱血として認められた.S5/8部分切除を施行.迅速病理組織学的検査で,類洞拡張と鬱血を認め,悪性所見はなかった.病理組織学的検査では,正常肝と思われた非腫瘤部に類洞拡張と鬱血を認め肝臓全体がblue liverの所見であり,腫瘤部...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 46; no. 5; pp. 350 - 355
Main Authors 田口, 健一, 池田, 泰治, 藤, 也寸志, 大垣, 吉平, 前原, 伸一郎, 森田, 勝, 南, 一仁, 岡村, 健, 知念, 順樹, 坂口, 善久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2013
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2012.0170

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Summary:症例は45歳の女性で,直腸癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術,D3郭清を施行した.pStage IIIaであり,術後補助化学療法としてmFOLFOX6を施行していたが,9コース施行後の術後半年目の腹部造影CTで肝S5/8,S4に境界不明瞭な低吸収領域を認めた.MRIなど画像検査で,肝転移の可能性が否定できなかったため手術を施行した.手術所見では,S5/8を中心に局所的な鬱血として認められた.S5/8部分切除を施行.迅速病理組織学的検査で,類洞拡張と鬱血を認め,悪性所見はなかった.病理組織学的検査では,正常肝と思われた非腫瘤部に類洞拡張と鬱血を認め肝臓全体がblue liverの所見であり,腫瘤部はさらに高度の類洞拡張と鬱血が認められた.これにより偽腫瘍を形成したと推察された.直腸癌術後のmFOLFOX6施行中に出現し肝転移と鑑別が困難であった,非常にまれな肝偽腫瘍の1例を経験した.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2012.0170