高齢者早期食道未分化癌・燕麦細胞癌 (oat cell carcinoma) の1治験例
深達度sm (癌の深達が粘膜下層までのもの) の早期食道未分化癌で, しかも燕麦細胞癌 (oat cell carcinoma) の1治験例を報告し, 文献的考察を行った.自験例は72歳の高齢男性で, 嚥下困難を主訴として来院し, バリウムによるX線検査にて食道の異常陰影を指摘さる.食道癌との診断のもとに開胸, 開腹術にて食道亜全別, 胸骨後, 左頸部で食道・胃管吻合術を行った.切除標本の肉眼所見では, 腫瘤はほぼ球形の3.0×3.6×1.0cmの隆起型, 明瞭型に属するもので, 組織学的には膨脹型で深達度smの食道未分化癌を主体とし, 詳細な組織検索によって一部に燕麦細胞癌 (oat cel...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 45; no. 6; pp. 859 - 864 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
1985
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.45.859 |
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Summary: | 深達度sm (癌の深達が粘膜下層までのもの) の早期食道未分化癌で, しかも燕麦細胞癌 (oat cell carcinoma) の1治験例を報告し, 文献的考察を行った.自験例は72歳の高齢男性で, 嚥下困難を主訴として来院し, バリウムによるX線検査にて食道の異常陰影を指摘さる.食道癌との診断のもとに開胸, 開腹術にて食道亜全別, 胸骨後, 左頸部で食道・胃管吻合術を行った.切除標本の肉眼所見では, 腫瘤はほぼ球形の3.0×3.6×1.0cmの隆起型, 明瞭型に属するもので, 組織学的には膨脹型で深達度smの食道未分化癌を主体とし, 詳細な組織検索によって一部に燕麦細胞癌 (oat cell carcinoma) が認められた.一般に食道の未分化癌とは, 細胞間橋, 角化や求心性の細胞成熟傾向, 粘液産生, 腺腔形成など, 組織学的に扁平上皮細胞への分化を示さないものを称するとされている.本例は部分的ではあるが, 小円形の癌細胞が充実性に増殖している像を呈しており, これは肺癌におけるoat cell carcinomaと同様の所見である.すなわち, 小細胞未分化癌 (small cell carcinoma) に極めて類似している.統計的には, 食道癌ではまれとされている腺癌が2.3%, 本例のような未分化癌は1.7%とその頻度は極めて低い.その性質は内分泌性腫瘍, すなわち, ACTH産生の癌Argyrophil cell carcinoma (Apudoma) などともいわれているようにホルモン産生と深い関係があるようである.予後は極めて不良とされているが, 放射線療法や有効な化学療法などの併用によって良好な成績が得られるものと思われるが, 本例は幸いなことに早期癌であったので, より良い遠隔成績が得られるものと期待される. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.45.859 |