S-1療法が奏効した巨大十二指腸粘液癌切除の1例

症例は64歳の女性で,右下腹部のしこりと疼痛を主訴に受診した.CEA異常高値を認め,上部内視鏡検査にて十二指腸下行脚乳頭部対側に2型腫瘍が確認され,生検にて粘液腺癌の診断となった.CTにて右腹腔内に10 cm大の空洞形成を伴う巨大腫瘍を認め,十二指腸と上行結腸への穿通と,横行結腸浸潤が確認され,下大静脈浸潤が疑われるリンパ節転移も確認された.切除不能十二指腸癌の診断にてS-1療法が開始され,CEAは半減したが,空洞内膿瘍による症状悪化により治療継続は困難となり,幽門輪温存膵頭十二指腸切除と右半結腸切除術を施行した.術後診断は十二指腸粘液腺癌で,下大静脈に接したリンパ節にのみ転移を認めた.十二指...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 47; no. 9; pp. 490 - 498
Main Authors 佐藤, 博紀, 久保, 雅俊, 水田, 稔, 山本, 澄治, 宇高, 徹総, 宮谷, 克也, 遠藤, 出
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2014
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2013.0267

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Summary:症例は64歳の女性で,右下腹部のしこりと疼痛を主訴に受診した.CEA異常高値を認め,上部内視鏡検査にて十二指腸下行脚乳頭部対側に2型腫瘍が確認され,生検にて粘液腺癌の診断となった.CTにて右腹腔内に10 cm大の空洞形成を伴う巨大腫瘍を認め,十二指腸と上行結腸への穿通と,横行結腸浸潤が確認され,下大静脈浸潤が疑われるリンパ節転移も確認された.切除不能十二指腸癌の診断にてS-1療法が開始され,CEAは半減したが,空洞内膿瘍による症状悪化により治療継続は困難となり,幽門輪温存膵頭十二指腸切除と右半結腸切除術を施行した.術後診断は十二指腸粘液腺癌で,下大静脈に接したリンパ節にのみ転移を認めた.十二指腸内腔の2型腫瘍の著明な縮小もあり,S-1による術後補助化学療法を施行し,CEAは正常化し,18か月経過も再発は認められていない.今回S-1療法が奏効した巨大十二指腸粘液癌症例を経験したので報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2013.0267