多発囊胞状局所浸潤およびリンパ節転移を伴った原発性十二指腸球部癌

症例は53歳の男性で,人間ドックにて膵頭部付近の多発囊胞を指摘された.6か月間に多発囊胞は増大した.それぞれの囊胞には囊胞内隔壁や壁内結節を認めず,主膵管との交通も認めなかった.上部消化管内視鏡検査で原発性十二指腸癌と診断され,全ての囊胞とあわせて膵頭十二指腸切除術を行った.切除標本の病理検索では十二指腸球部前壁を中心に5.5×4.2 cmの不整な周堤を伴う潰瘍性病変を認め,乳頭状腺癌と診断した.癌は著明な細胞外粘液を産生し多囊胞状となっていたが,膵内に囊胞は認められず,膵管内粘液性乳頭腫瘍は否定された.一部の囊胞周囲にリンパ節組織を含む部分を認め,多発囊胞は粘液産生細胞を含んだ癌細胞の局所浸...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 9; pp. 873 - 881
Main Authors 中平, 伸, 倉岡, 和矢, 文, 正浩, 山下, 晋也, 井上, 雅史, 清水, 洋祐, 澤田, 元太, 畑中, 信良, 種村, 匡弘, 伊禮, 俊充, 富永, 春海
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0110

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Summary:症例は53歳の男性で,人間ドックにて膵頭部付近の多発囊胞を指摘された.6か月間に多発囊胞は増大した.それぞれの囊胞には囊胞内隔壁や壁内結節を認めず,主膵管との交通も認めなかった.上部消化管内視鏡検査で原発性十二指腸癌と診断され,全ての囊胞とあわせて膵頭十二指腸切除術を行った.切除標本の病理検索では十二指腸球部前壁を中心に5.5×4.2 cmの不整な周堤を伴う潰瘍性病変を認め,乳頭状腺癌と診断した.癌は著明な細胞外粘液を産生し多囊胞状となっていたが,膵内に囊胞は認められず,膵管内粘液性乳頭腫瘍は否定された.一部の囊胞周囲にリンパ節組織を含む部分を認め,多発囊胞は粘液産生細胞を含んだ癌細胞の局所浸潤とリンパ節転移によるものと診断した.粘液免疫染色検査では胃型形質を有していた.原発性十二指腸癌は消化器症状を契機に発見されることが多いが,十二指腸近傍に多発囊胞を認めた場合は本疾患も考慮されるべきである.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0110