思春期女子の血中Inhibin値の変動

Inhibin (INH) は性腺にて産生される蛋白ホルモンであり, 選択的に脳下垂体前葉のFSH分泌を抑制することが知られている.しかし思春期における血中動態及び役割については明らかではない.そこで今回我々は思春期女子を年次毎に連続追跡し血中INH値を測定すると共に, FSH, estradiol (E2) との関係について検討を行った.対象は6歳から6年間連続追跡し得た健康な女子6名である.血漿中のINH値, FSH値及びE2値は特異的RIA法によって測定した.女子の血中INH値は6歳 (55.02±5.60pg/ml, mean±S.E.) より減少し, 9歳で19.83±4.30pg/...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 55; no. 3; pp. 248 - 252
Main Authors 斎藤, 裕, 千葉, 博, 河合, 清文, 矢内原, 巧, 星野, 公彦, 長塚, 正晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 1995
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.55.248

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Summary:Inhibin (INH) は性腺にて産生される蛋白ホルモンであり, 選択的に脳下垂体前葉のFSH分泌を抑制することが知られている.しかし思春期における血中動態及び役割については明らかではない.そこで今回我々は思春期女子を年次毎に連続追跡し血中INH値を測定すると共に, FSH, estradiol (E2) との関係について検討を行った.対象は6歳から6年間連続追跡し得た健康な女子6名である.血漿中のINH値, FSH値及びE2値は特異的RIA法によって測定した.女子の血中INH値は6歳 (55.02±5.60pg/ml, mean±S.E.) より減少し, 9歳で19.83±4.30pg/mlと有意に低値を示した後上昇した.一方同一検体における血中FSH値及びE2値は, それぞれ7歳より9歳にかけて有意な上昇傾向を示した.血中INH値が減少傾向にある女子の6歳~9歳において, 血中INH値とFSH値は負の相関傾向を認めたが, 統計的には有意ではなかった.また血中E2値とFSH値, 血中INH値とE2値の問にも有意な相関を認めなかった.INHの主な産生部位は性腺と考えられる.連続追跡の結果, INHは6歳から9歳にかけて減少し以後上昇するという二相性の変化を示すことが初めて明らかにされ, この血中INH値の思春期前期の低下がFSH上昇のtriggerとなる可能性が示唆された.このことにより中枢と性腺の発育段階においてINHの思春期における役割はその時期によって異なる可能性が示唆された.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.55.248