Perfluorochemicals (FC 43) 浸漬法の心筋保護効果について

心臓手術における心筋局所冷却法は有効な心筋保護法とされているが, 冷却による様々な問題が存在する.心膜腔に氷水を満たすことによる横隔神経障害, 冠動脈スパズムによる心筋保護液の不均等供給, 心筋細胞蛋白の変性などである.これらの冷却障害を回避するため心筋冷却を軽度とし, 増大する心筋酸素需要に対する酸素供給の目的で, 優れた酸素運搬能を持つPerfluorochemicals (PFC) のFC43に心臓を浸漬し, その有効性について検討した.ラット摘出灌流心でcardioplegiaによる急速心停止後, 心筋温30℃で60分間 (A群) および90分間 (B群) の冠灌流遮断中に心臓をFC...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 55; no. 5; pp. 473 - 478
Main Authors 安藤, 進, 山田, 眞, 井上, 恒一, 小沢, 敦, 関口, 茂明, 野元, 成郎, 門倉, 光隆, 本田, 完, 花房, 雄治, 高場, 利博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.10.1995
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.55.473

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Summary:心臓手術における心筋局所冷却法は有効な心筋保護法とされているが, 冷却による様々な問題が存在する.心膜腔に氷水を満たすことによる横隔神経障害, 冠動脈スパズムによる心筋保護液の不均等供給, 心筋細胞蛋白の変性などである.これらの冷却障害を回避するため心筋冷却を軽度とし, 増大する心筋酸素需要に対する酸素供給の目的で, 優れた酸素運搬能を持つPerfluorochemicals (PFC) のFC43に心臓を浸漬し, その有効性について検討した.ラット摘出灌流心でcardioplegiaによる急速心停止後, 心筋温30℃で60分間 (A群) および90分間 (B群) の冠灌流遮断中に心臓をFC 43に浸漬したA2群, B2群とFC 43に浸漬しなかった対照A1群, B1群の再灌流後の心機能 (心拍数, 左室最大収縮期圧, LV dp/dt) および冠灌流量の回復を検討した.その結果60分遮断実験ではA2群の回復率平均値がA1群より高値であったが有意差は認められなかった.遮断時間を90分にしてみるとB1群は再灌流後心拍動を再開できなかった心臓が10例中5例あった.これに対しFC43に浸漬したB2群は全例が心拍を再開し, 心機能は70%以上に回復し, B1群より有意 (p<0.001) に良好であった.心筋冷却軽度 (30℃) で虚血, 低酸素下の心筋の酸素需要に対し, Perfluorochemicalsに心臓を浸漬することで心筋に酸素を供給した可能性が示唆され, 心筋保護に有用と考えられた.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.55.473