閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置療法で関節円板の位置が変化し,臼歯部開咬を発症した1例
患者は65歳の女性で,当外来初診1か月前に閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)の診断を受け,口腔内装置(Oral Appliance:OA)治療を開始した。OAを3日使用後に,両側顎関節や咬筋の顎運動時痛,右側臼歯部開咬(Posterior Open Bite:POB)を発症した。その後OA使用を中止し,痛みはすぐに消失したが,右側POBは数日経過しても変わらず,当外来を受診した。既往として,数年前より両側クリック様の雑音と間欠的な右側臼歯部咬合不全があったが,POB発症後に右側の雑音が消失し,咬合不全が持続したという。臨床所見として,左側クリック音を認...
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Published in | 日本顎関節学会雑誌 Vol. 34; no. 1; pp. 3 - 9 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本顎関節学会
20.04.2022
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Subjects | |
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ISSN | 0915-3004 1884-4308 |
DOI | 10.11246/gakukansetsu.34.3 |
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Summary: | 患者は65歳の女性で,当外来初診1か月前に閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)の診断を受け,口腔内装置(Oral Appliance:OA)治療を開始した。OAを3日使用後に,両側顎関節や咬筋の顎運動時痛,右側臼歯部開咬(Posterior Open Bite:POB)を発症した。その後OA使用を中止し,痛みはすぐに消失したが,右側POBは数日経過しても変わらず,当外来を受診した。既往として,数年前より両側クリック様の雑音と間欠的な右側臼歯部咬合不全があったが,POB発症後に右側の雑音が消失し,咬合不全が持続したという。臨床所見として,左側クリック音を認めたが,開口制限や圧痛は認めなかった。パノラマエックス線画像では,右側下顎頭と関節窩の間のスペースに拡大を認め,MRI像にて右側関節円板は正常な位置にあったが,左側は非復位性関節円板前方転位が認められた。以上より,右側関節円板の整位による下顎頭の変位によって生じたPOBと診断した。その後運動療法などを行うことにより,咬合回復が得られた。咬合安定が確認できた後,OSAの治療再開のためOAを再作製し,前方移動量は50%前方位と少ない移動量を設定し,現在咬合不全の再発もなく,良好な経過を得られている。本症例からOSAのOA治療を行う際,顎関節に対する影響を考えると少ない前方移動量から始め,十分なOSA治療効果が得られなければ,痛みや咬合不全など副作用を考慮しながら,移動量を再検討することが臨床的には重要であると思われた。 |
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ISSN: | 0915-3004 1884-4308 |
DOI: | 10.11246/gakukansetsu.34.3 |