粘膜下腫瘍形態を呈した重複腸管由来小腸癌の1例

症例は48歳の男性で,健診でのCEA高値の精査目的で近医を受診し,腹部CTで直腸前壁側に壁外性腫瘤を認めたため,当科を紹介受診した.腹部造影CTで直腸または小腸由来の粘膜下腫瘍が疑われたが,超音波内視鏡下穿刺吸引術では小腸腸管重複症を疑い,診断的治療目的に腹腔鏡で観察したところ,回腸終末部に小腸漿膜側に突出する20 mm大の結節性病変を認めた.小腸由来の粘膜下腫瘍と判断し同部位を含む小腸部分切除を行った.病理組織学的には一部小腸壁と固有筋層を共有する囊胞性病変を認め,内腔の上皮はほぼ全て腺癌に置き換わっており,重複腸管由来の小腸癌と確定診断した.成人腸管重複症の報告例は増加しているが,癌化の報...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 5; pp. 447 - 454
Main Authors 三谷, 泰之, 横山, 省三, 中村, 有貴, 瀧藤, 克也, 山上, 裕機, 家田, 淳司, 堀田, 司, 水本, 有紀, 松田, 健司, 渡邉, 高士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0082

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Summary:症例は48歳の男性で,健診でのCEA高値の精査目的で近医を受診し,腹部CTで直腸前壁側に壁外性腫瘤を認めたため,当科を紹介受診した.腹部造影CTで直腸または小腸由来の粘膜下腫瘍が疑われたが,超音波内視鏡下穿刺吸引術では小腸腸管重複症を疑い,診断的治療目的に腹腔鏡で観察したところ,回腸終末部に小腸漿膜側に突出する20 mm大の結節性病変を認めた.小腸由来の粘膜下腫瘍と判断し同部位を含む小腸部分切除を行った.病理組織学的には一部小腸壁と固有筋層を共有する囊胞性病変を認め,内腔の上皮はほぼ全て腺癌に置き換わっており,重複腸管由来の小腸癌と確定診断した.成人腸管重複症の報告例は増加しているが,癌化の報告はまれである.成人での腸管重複症の術前診断は難しく,囊胞性の粘膜下腫瘍を疑った際は,腸管重複症さらにはその癌化の可能性も考慮する必要があり,癌化の診断に腫瘍マーカーの測定が有用である可能性が示唆された.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0082