動脈破格により血行再建なしで腹腔動脈合併膵全摘術を施行した局所進行膵癌の1例

症例は68歳の女性で,腹痛を主訴に当院紹介となった.腹部造影CTで膵体部から膵頭部にかけて40 mmの乏血性腫瘤を認め,門脈および脾静脈の浸潤と腹腔動脈,総肝動脈,脾動脈への広範な接触を伴うことから切除不能膵癌と診断した.化学療法を導入し,6サイクル施行後の画像評価でpartial responseが得られ,腫瘍マーカーも正常化していたことからconversion surgeryを検討した.根治切除には門脈と腹腔動脈の合併切除を要する膵全摘術の適応と考えた.通常は動脈血行再建を必要とするが,動脈破格を利用して血行再建で腹腔動脈合併膵全摘術(total pancreatectomy with c...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 1; pp. 32 - 40
Main Authors 伊藤, 将一朗, 加藤, 公一, 末永, 雅也, 宮﨑, 麻衣, 竹田, 伸, 市原, 周, 鈴木, 雄之典, 田嶋, 久子, 杉谷, 麻未, 片岡, 政人, 宇田, 裕聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.01.2021
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2019.0143

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Summary:症例は68歳の女性で,腹痛を主訴に当院紹介となった.腹部造影CTで膵体部から膵頭部にかけて40 mmの乏血性腫瘤を認め,門脈および脾静脈の浸潤と腹腔動脈,総肝動脈,脾動脈への広範な接触を伴うことから切除不能膵癌と診断した.化学療法を導入し,6サイクル施行後の画像評価でpartial responseが得られ,腫瘍マーカーも正常化していたことからconversion surgeryを検討した.根治切除には門脈と腹腔動脈の合併切除を要する膵全摘術の適応と考えた.通常は動脈血行再建を必要とするが,動脈破格を利用して血行再建で腹腔動脈合併膵全摘術(total pancreatectomy with celiac axis resection;以下,TP-CARと略記)を施行しえた.病理組織学的検査ではR0が得られており,術後1年4か月の現在,無再発で経過観察中である.血行再建でTP-CARを施行しえた膵癌の1例を経験したので報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2019.0143