腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術後に心タンポナーデを発症した1例

症例は70歳の女性で,2か月ほど前からの繰り返す嘔吐を主訴に来院した.精査の結果,III型食道裂孔ヘルニアの診断となり,待機的に腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行した.ヘルニア門は縫縮後メッシュで補強し,ヘルニアステープラーを使用し横隔膜に全周性に固定した.術翌日より酸素化低下と急激な血圧低下,頻脈を認め,緊急の胸腹部CTで心囊液の貯留を認めた.心タンポナーデと診断し,直ちに経皮的心囊穿刺を施行した.術後18日目に再度心タンポナーデを起こしたため,再度心囊ドレナージを施行し,ドレーンを留置し,5日後に抜去した.その後は再発なく,術後45日目に退院した.後方視的な手術ビデオの検証では,メッシュ...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 57; no. 1; pp. 1 - 9
Main Authors 梅木, 祐介, 田中, 毅, 稲葉, 一樹, 芹澤, 朗子, 中内, 雅也, 秋元, 信吾, 須田, 康一, 松波, 光志朗, 宇山, 一朗, 柴崎, 晋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.01.2024
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2022.0113

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Summary:症例は70歳の女性で,2か月ほど前からの繰り返す嘔吐を主訴に来院した.精査の結果,III型食道裂孔ヘルニアの診断となり,待機的に腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行した.ヘルニア門は縫縮後メッシュで補強し,ヘルニアステープラーを使用し横隔膜に全周性に固定した.術翌日より酸素化低下と急激な血圧低下,頻脈を認め,緊急の胸腹部CTで心囊液の貯留を認めた.心タンポナーデと診断し,直ちに経皮的心囊穿刺を施行した.術後18日目に再度心タンポナーデを起こしたため,再度心囊ドレナージを施行し,ドレーンを留置し,5日後に抜去した.その後は再発なく,術後45日目に退院した.後方視的な手術ビデオの検証では,メッシュ固定のヘルニアステープラーによる医原性心タンポナーデと考えられた.本疾患は致死率が非常に高いため,器具を正しく使用し本症を予防するとともに,術後にバイタルの異常を認めた場合には迅速に対応する必要がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2022.0113