持続型エキセナチドの週1回皮下注により血糖コントロールが可能となった認知症合併高齢糖尿病患者の1例

症例は74歳男性.64歳時に糖尿病を指摘されたが未治療で放置されていた.71歳時に脳梗塞を発症,それを契機に糖尿病の内服治療も開始され,来院前はグリメピリド3 mg,メトホルミン1,000 mg,アログリプチン25 mgを内服していた.2013年5月白内障にて当院眼科を受診した際,随時血糖値318 mg/dl,HbA1c 10.6%,グリコアルブミン24.9%とコントロール不良の糖尿病を認め当科へ紹介受診した.入院にて強化インスリン療法を行い血糖値は改善したが,MMSE 9/30点の認知症があり,インスリンの自己注射や薬効理解は困難であり,また家族による注射も拒否された.在宅インスリン療法は断...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 51; no. 4; pp. 375 - 380
Main Authors 丸山, 聡子, 佐川, 尚子, 宮尾, 益理子, 水野, 有三, 佐田, 晶, 近藤, 真衣, 鶴谷, 悠也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2014
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.51.375

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Summary:症例は74歳男性.64歳時に糖尿病を指摘されたが未治療で放置されていた.71歳時に脳梗塞を発症,それを契機に糖尿病の内服治療も開始され,来院前はグリメピリド3 mg,メトホルミン1,000 mg,アログリプチン25 mgを内服していた.2013年5月白内障にて当院眼科を受診した際,随時血糖値318 mg/dl,HbA1c 10.6%,グリコアルブミン24.9%とコントロール不良の糖尿病を認め当科へ紹介受診した.入院にて強化インスリン療法を行い血糖値は改善したが,MMSE 9/30点の認知症があり,インスリンの自己注射や薬効理解は困難であり,また家族による注射も拒否された.在宅インスリン療法は断念し,経口糖尿病薬を再開し,新規週1回皮下注製剤のGLP-1受容体作動薬である,持続型エキセナチド(Bydureon®)の併用を開始した.1週後には空腹時血糖値130~230 mg/dlとなり自宅退院した.退院後は週1回通院し,看護師による注射を継続した.注射部の皮下硬結を認める以外は,低血糖も含めて明らかな副作用は認められず,導入5カ月後にはHbA1c 7.1%まで改善した.認知症合併高齢糖尿病患者の薬物治療は難渋する場合が多いが,週1回皮下注製剤は,介助者による投薬管理が行いやすい製剤であり,今後有用な治療選択肢になり得ると期待される.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.51.375