長期経過観察により膵全摘術を要した巨大膵漿液性囊胞腫瘍の1切除例

膵漿液性囊胞腫瘍(serous cystic neoplasm;以下,SCNと略記)はほとんどが良性であり経過観察とされるが,有症状例や増大傾向を呈する場合などの一部の症例は手術適応と考えられている.本症例は76歳の女性で,16年前に膵体部のSCNを指摘され経過観察とされていたが,その後の定期外来通院はされていなかった.上腹部の圧迫感と体重減少を主訴に受診し,SCNの著明な増大を認め手術加療の方針となった.腫瘍の胃十二指腸動脈への浸潤が疑われたため,膵頭部の温存は困難と判断して膵全摘術を施行した.切除標本の病理組織検査では悪性所見は見られなかった.本邦では経過観察とされることの多いSCNである...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 58; no. 3; pp. 154 - 161
Main Authors 箱田, 浩之, 宮田, 陽一, 谷, 圭吾, 樋口, 正美, 永井, 元樹, 冨樫, 順一, 野村, 幸博, 山本, 理恵子, 志村, 謙次, 鈴木, 良夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.03.2025
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2024.0015

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Summary:膵漿液性囊胞腫瘍(serous cystic neoplasm;以下,SCNと略記)はほとんどが良性であり経過観察とされるが,有症状例や増大傾向を呈する場合などの一部の症例は手術適応と考えられている.本症例は76歳の女性で,16年前に膵体部のSCNを指摘され経過観察とされていたが,その後の定期外来通院はされていなかった.上腹部の圧迫感と体重減少を主訴に受診し,SCNの著明な増大を認め手術加療の方針となった.腫瘍の胃十二指腸動脈への浸潤が疑われたため,膵頭部の温存は困難と判断して膵全摘術を施行した.切除標本の病理組織検査では悪性所見は見られなかった.本邦では経過観察とされることの多いSCNであるが,本症例のように良性であっても増大傾向にあり周囲臓器の圧排や浸潤が疑われる症例に対しては,高侵襲の手術が必要となる場合があり,定期的な経過観察と適切な時期での手術適応の決定が必要であると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2024.0015