胆囊炎に対する複数回の保存治療後に胆石イレウスによる小腸穿孔を来した超高齢者の1例

症例は93歳の男性で,当院にて8か月前,4か月前に胆石胆囊炎に対し保存治療が行われ経過観察となっていた.6日前からの腹痛に加え嘔吐を認めたため再受診した.腹部CTでは,胆囊内に存在していた3 cm大の胆石が上部空腸へ落下しており,その口側空腸の拡張と浮腫性肥厚を認め,腹水も伴っていた.筋性防御を認め胆石イレウスによる穿孔性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した.上部空腸に胆石が嵌頓しており,その口側空腸に穿孔を疑う所見を認めたため同部位を切除した.胆囊周囲は強固に癒着し,大網で被覆されていたため,胆囊摘出は行わなかった.病理組織学的所見では,切除腸管の複数箇所に穿孔部を認め,胆石イレウスによる小腸穿孔...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 51; no. 2; pp. 138 - 145
Main Authors 矢野, 智之, 川瀬, 寛, 松井, あや
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2018
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2017.0074

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Summary:症例は93歳の男性で,当院にて8か月前,4か月前に胆石胆囊炎に対し保存治療が行われ経過観察となっていた.6日前からの腹痛に加え嘔吐を認めたため再受診した.腹部CTでは,胆囊内に存在していた3 cm大の胆石が上部空腸へ落下しており,その口側空腸の拡張と浮腫性肥厚を認め,腹水も伴っていた.筋性防御を認め胆石イレウスによる穿孔性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した.上部空腸に胆石が嵌頓しており,その口側空腸に穿孔を疑う所見を認めたため同部位を切除した.胆囊周囲は強固に癒着し,大網で被覆されていたため,胆囊摘出は行わなかった.病理組織学的所見では,切除腸管の複数箇所に穿孔部を認め,胆石イレウスによる小腸穿孔と診断した.胆石イレウスによる穿孔性腹膜炎の報告はまれであるが,高齢者に対する胆囊炎の保存治療を行う際には,胆石イレウスの合併症として消化管穿孔の可能性を念頭において経過観察することが肝要と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2017.0074