腎癌術後の転移性膵腫瘍に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除後の急性副腎不全の1例

症例は60歳の男性で,貧血を主訴に受診した.10年前に左腎癌の既往がある.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に腫瘤を認めた.CTで,膵頭部から十二指腸下行脚に突出する6 cm大の造影される腫瘤を認めた.5年前のCTでも,1 cm大の造影される病変を認め,経時的に増大しており,腎癌の転移性膵腫瘍の十二指腸浸潤と診断した.亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後7日目に,急性胆管炎,敗血症性ショックに急性副腎不全の合併を認めた.原因不明の低血糖から急性副腎不全を疑うまでに時間を要したが,ステロイドの投与,全身管理にて比較的速やかに全身状態改善し,術後25日目に退院した.退院後の副腎機能精査で...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 55; no. 8; pp. 511 - 519
Main Authors 小林, 真一郎, 藤枝, 裕倫, 渡邊, 梨紗子, 古田, 美保, 影山, 優美子, 吉田, めぐみ, 山口, 竜三, 渡邊, 真哉, 豊田, 良鎬, 會津, 恵司, 佐藤, 文哉, 岩田, 力
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2022
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2020.0107

Cover

More Information
Summary:症例は60歳の男性で,貧血を主訴に受診した.10年前に左腎癌の既往がある.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に腫瘤を認めた.CTで,膵頭部から十二指腸下行脚に突出する6 cm大の造影される腫瘤を認めた.5年前のCTでも,1 cm大の造影される病変を認め,経時的に増大しており,腎癌の転移性膵腫瘍の十二指腸浸潤と診断した.亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後7日目に,急性胆管炎,敗血症性ショックに急性副腎不全の合併を認めた.原因不明の低血糖から急性副腎不全を疑うまでに時間を要したが,ステロイドの投与,全身管理にて比較的速やかに全身状態改善し,術後25日目に退院した.退院後の副腎機能精査で,潜在性の慢性副腎不全症を認めた.身体的ストレスが大きい状態では,常に急性副腎不全を生じるリスクがあることを念頭に,原因不明の低血糖を認めた時は,急性副腎不全を疑い早急な治療開始をすることが肝要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0107