非典型的な画像所見により術前に診断しえなかった後腹膜びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の1例

症例は65歳の男性で,外傷の精査目的に施行した腹部CTで膵頭部背側に8 cm大の境界明瞭な腫瘍を指摘され,当院に紹介された.腫瘍は造影CTにて漸増性に不均一な造影効果を示し,内部に変性壊死を示唆する低濃度域を認めた.腫瘍近傍に腫大したリンパ節を二つ認めたが,癒合はなかった.超音波内視鏡検査では,境界明瞭な低エコーの充実性病変として描出され,一部で十二指腸固有筋層との連続性が疑われた.以上の画像所見から,十二指腸筋層由来の間葉系悪性腫瘍と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的診断はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で,腫瘍内部に壊死や線維化を伴い,辺縁では膵頭神経叢への浸潤を認めた.悪性...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 5; pp. 359 - 366
Main Authors 坂井, 紘紀, 木村, 大, 福島, 健太郎, 池原, 智彦, 小林, 聡, 清水, 明, 本山, 博章, 副島, 雄二, 細田, 清孝, 玉田, 恒, 野竹, 剛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2021
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2019.0110

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Summary:症例は65歳の男性で,外傷の精査目的に施行した腹部CTで膵頭部背側に8 cm大の境界明瞭な腫瘍を指摘され,当院に紹介された.腫瘍は造影CTにて漸増性に不均一な造影効果を示し,内部に変性壊死を示唆する低濃度域を認めた.腫瘍近傍に腫大したリンパ節を二つ認めたが,癒合はなかった.超音波内視鏡検査では,境界明瞭な低エコーの充実性病変として描出され,一部で十二指腸固有筋層との連続性が疑われた.以上の画像所見から,十二指腸筋層由来の間葉系悪性腫瘍と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的診断はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で,腫瘍内部に壊死や線維化を伴い,辺縁では膵頭神経叢への浸潤を認めた.悪性リンパ腫は,腫瘍内部が均一に造影されるなどの典型的な画像所見により他疾患との鑑別が可能とされるが,自験例のように,線維化や内部の壊死により典型像を呈さない可能性も念頭に置き,術前検査を行う必要がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2019.0110