神奈川県下某町の老人入院外医療費に影響を与える要因分析―特に, 循環器系疾患に着目して
老人医療費が年々増高しつつあることから増高要因に関する調査研究業績は漸次, 発表されている.このなかで, 本研究は老人の入院外医療費に影響を及ぼす各種要因を明かにするため, その疾病割合も医療費割合も最も多い循環器系疾患に着目して, 神奈川県下某町 (病院1, 診療所9) の平成3年7.月に請求された70歳以上の入院外の診療報酬明細書 (以下, レセプトという) 1, 790件を分析・検討したものである.分析方法として, 特にレセプトに記載されている傷病名のうちから主傷病と副傷病を選定し, レセプトを主傷病が循環器系患と循環器系疾患以外の2つのグループに分け, さらにこれらのグループをそれぞれ...
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| Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 52; no. 6; pp. 658 - 668 |
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| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
昭和大学学士会
1992
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
| DOI | 10.14930/jsma1939.52.658 |
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| Summary: | 老人医療費が年々増高しつつあることから増高要因に関する調査研究業績は漸次, 発表されている.このなかで, 本研究は老人の入院外医療費に影響を及ぼす各種要因を明かにするため, その疾病割合も医療費割合も最も多い循環器系疾患に着目して, 神奈川県下某町 (病院1, 診療所9) の平成3年7.月に請求された70歳以上の入院外の診療報酬明細書 (以下, レセプトという) 1, 790件を分析・検討したものである.分析方法として, 特にレセプトに記載されている傷病名のうちから主傷病と副傷病を選定し, レセプトを主傷病が循環器系患と循環器系疾患以外の2つのグループに分け, さらにこれらのグループをそれぞれ副傷病で循環器系疾患有り, 循環器系疾患以外の疾患有り, 副傷病無しの3つの傷病のTypeに細分して検討した.その結果明かとなったのは, 主に次の通りであった. (1) 某町の1件当り点数は全国に比べて低いものの, 主傷病の循環器系疾患の件数及び総点数の割合は全国と同様に第1位であった. (2) 主傷病の循環器系疾患の55.8%が高血圧性疾患で, 副傷病でも同疾患が最も多かった. (3) 主傷病が循環器系疾患のグループと循環器系疾患以外のグループ別の検討では, 1件当り点数は両グループ間に差が認められなかったが, その要素を1件当り日数と1日当り点数に分けると両グループの医療費構造は大きく異なり, 主傷病が循環器系疾患のグループは通院回数よりも1日当りの単価が高く, 逆に主傷病が循環器系疾患以外のグループは, 1日当りの単価よりもむしろ通院回数が多い医療費構造であった. (4) 傷病のType別の検討では, すべてのTypeで診療行為のなかでも特に再診と投薬料が1日当り点数に影響を与えていた. (5) 1日当り点数に, 性, 年齢階級, 傷病のTypeおよび診療行為などが相互に及ぼす影響を数量化I類を用いて分折した結果では, 診療行為が全体として性, 年齢階級, 傷病のTypeよりも1日当り点数に大きく影響していた.今後, 老人医療費の軽減を図るためには, 循環器系疾患を中心とした健康教育, 健康診査, 重症化防止策等の一層の充実強化が必要であろう. |
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| ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
| DOI: | 10.14930/jsma1939.52.658 |