S-1療法を中心とした集学的治療により病理学的完全寛解が得られた肝転移を伴う膵頭部癌の1例

症例は58歳の男性で,CTで上腸間膜動脈に180°未満の浸潤を疑う切除可能境界膵頭部癌の診断で紹介となり,術前化学放射線療法(neoadjuvant chemoradiation therapy;以下,NACRTと略記)(S-1(120 mg/day 4投2休1クール),RT 50.4 Gy/28日)を施行した.NACRT後,画像の効果判定は有効であったが,動脈浸潤部の所見は不変であった.開腹手術に臨んだが,1か所の肝転移を認め試験開腹術とした.術後はS-1療法を継続し,7クール後,腫瘍はさらに縮小し,新規病変も認めなかったため,膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的治療効果判定はGrade...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 50; no. 6; pp. 461 - 468
Main Authors 伊藤, 貴明, 上村, 直, 上坂, 克彦, 山本, 有祐, 岡村, 行泰, 宮田, 隆司, 蘆田, 良, 杉浦, 禎一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2017
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2016.0122

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Summary:症例は58歳の男性で,CTで上腸間膜動脈に180°未満の浸潤を疑う切除可能境界膵頭部癌の診断で紹介となり,術前化学放射線療法(neoadjuvant chemoradiation therapy;以下,NACRTと略記)(S-1(120 mg/day 4投2休1クール),RT 50.4 Gy/28日)を施行した.NACRT後,画像の効果判定は有効であったが,動脈浸潤部の所見は不変であった.開腹手術に臨んだが,1か所の肝転移を認め試験開腹術とした.術後はS-1療法を継続し,7クール後,腫瘍はさらに縮小し,新規病変も認めなかったため,膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的治療効果判定はGrade 4であった.術後はS-1による補助療法を施行し,現在,24か月無再発生存中である.近年,化学療法の進歩により,切除不能膵癌が画像上切除可能となる症例が散見される.本症例のように,切除を行い良好な成績が得られる症例もあるが,手術の適応や時期には一定の見解はなく,今後の症例集積が重要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2016.0122