病理解剖を補助する死因究明手法としての死後画像について 死後CT画像と病理解剖所見との比較検討を中心に

現在,わが国では診療関連死の死因究明に関して,第三者機関が解剖をはじめとする調査を行い,医療安全の向上に役立てる仕組みが模索されている.診療関連死の死因究明調査の実際において,客観性を保障するには解剖による調査が必須であるが,有効かつ迅速な医療評価を可能にするため,解剖を補助する手法として死後画像(CT,MRI等を用いた画像診断)を用いることも考慮に値する.東京大学を主体とした厚生労働省科学研究費補助金研究事業研究の一部として,2例の病理解剖症例で解剖前に死後画像の撮影ができたので,病理解剖所見との比較を含めて報告した.今回の研究では,死後画像は病理解剖を補助する手段として有効であると考えられ...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 70; no. 4; pp. 288 - 292
Main Authors 河原, 正明, 九島, 巳樹, 後閑, 武彦, 高澤, 豊, 本間, まゆみ, 秋田, 英貴, 深山, 正久, 矢持, 淑子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.08.2010
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma.70.288

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Summary:現在,わが国では診療関連死の死因究明に関して,第三者機関が解剖をはじめとする調査を行い,医療安全の向上に役立てる仕組みが模索されている.診療関連死の死因究明調査の実際において,客観性を保障するには解剖による調査が必須であるが,有効かつ迅速な医療評価を可能にするため,解剖を補助する手法として死後画像(CT,MRI等を用いた画像診断)を用いることも考慮に値する.東京大学を主体とした厚生労働省科学研究費補助金研究事業研究の一部として,2例の病理解剖症例で解剖前に死後画像の撮影ができたので,病理解剖所見との比較を含めて報告した.今回の研究では,死後画像は病理解剖を補助する手段として有効であると考えられるが,それのみでは不十分であった.すなわち,症例1では腫瘍性疾患の原発巣や組織型などについて,症例2では中枢神経の変性疾患の詳細について,ともに死後画像のみでは不明であった.しかし,外傷や出血などで死後画像が死因の特定に役立つと言われており,司法,行政解剖に関係した症例では特に有効と考えられている.例えば,大動脈解離,腹腔内出血などは,死後画像のみで死因究明できると考えられる.あらかじめ死後画像を見ておくと,病理解剖で重点的に検索する部位を示すことも可能である.実施面では,死後画像の撮影を臨床装置で行なうことは限界があり,将来的に死後画像撮影のための専用装置の導入を考慮する必要があると思われた.医療事故の調査には死後画像を加えた剖検が必要で,その目的は医療者の過失の有無を判定することではなく,原因を分析して今後の医療の発展に役立てることである.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma.70.288