農業労働力の変化と経営継承

本研究では,2020年農林業センサスデータにより,2015年から2020年にかけての農業労働力の変化の動向と農業経営の経営継承について分析し,以下の特徴を明らかにした.第一に,農業経営の世代交代の停滞である.農業経営体の経営者数は,これまでの傾向と同様に減少している.特に,2020年農林業センサスで1は,農家世帯員の農業従事が低下しており,今後,農業経営の世代交代が停滞すると考えられる.第二に,国内農業における農業法人のシェアの増加である.豚,鶏などの中小家畜では,農業法人が農業生産の大部分を占めている.第三に,一部の農業経営体において常雇人数の増加がみられる.2015年から2020年にかけて...

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Published in農業問題研究 Vol. 54; no. 2; pp. 17 - 27
Main Author 澤田 守
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 農業問題研究学会 2023
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ISSN0915-597X
2434-2203
DOI10.24808/nomonken.54.2_17

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Summary:本研究では,2020年農林業センサスデータにより,2015年から2020年にかけての農業労働力の変化の動向と農業経営の経営継承について分析し,以下の特徴を明らかにした.第一に,農業経営の世代交代の停滞である.農業経営体の経営者数は,これまでの傾向と同様に減少している.特に,2020年農林業センサスで1は,農家世帯員の農業従事が低下しており,今後,農業経営の世代交代が停滞すると考えられる.第二に,国内農業における農業法人のシェアの増加である.豚,鶏などの中小家畜では,農業法人が農業生産の大部分を占めている.第三に,一部の農業経営体において常雇人数の増加がみられる.2015年から2020年にかけては,全体的に常雇人数が大きく減少した.しかし,常雇人数が多い一部の農業経営体では,常雇人数を増やし,規模拡大する傾向がみられる.第四に,個人経営体だけではなく,農業法人においても経営者が高齢化しており,後継者不在の農業法人は30%以上を占めている. 以上の結果からは,個人経営体の減少が進んでいる一方で,農業法人においても経営継承が困難な経営体が多く,継承対策が喫緊の課題となっている.
ISSN:0915-597X
2434-2203
DOI:10.24808/nomonken.54.2_17