抗血栓療法中の咳嗽による腹直筋血腫の1例

【はじめに】腹直筋血腫は上・下腹壁動静脈や腹直筋線維の破綻により腹壁に血腫が生じる比較的まれな疾患である。発症には外傷のほか, 抗血栓症薬の使用や加齢, 咳嗽等の関与が指摘されている。【症例】77歳の男性で心房細動, 脳梗塞, 狭心症に対し抗血栓症薬の内服を行っていた。就寝中に咳嗽が出現した後から右側腹部痛と腹部腫瘤を自覚し当院へ救急搬送された。来院時, 意識は清明でバイタルサインは安定していた。身体所見では右上腹部に腫瘤性病変と皮下出血痕を認めていた。造影CTで右腹直筋に造影剤の漏出を認めたが保存的加療を選択し, 症状の増悪なく経過して第6病日に軽快退院した。【考察】抗血栓療法中に突然生じる...

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Published in日本救急医学会関東地方会雑誌 Vol. 41; no. 4; pp. 418 - 421
Main Authors 小松, 祐美, 毛利, 晃大, 金井, 尚之, 今村, 友典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本救急医学会関東地方会 28.12.2020
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ISSN0287-301X
2434-2580
DOI10.24697/jaamkanto.41.4_418

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Summary:【はじめに】腹直筋血腫は上・下腹壁動静脈や腹直筋線維の破綻により腹壁に血腫が生じる比較的まれな疾患である。発症には外傷のほか, 抗血栓症薬の使用や加齢, 咳嗽等の関与が指摘されている。【症例】77歳の男性で心房細動, 脳梗塞, 狭心症に対し抗血栓症薬の内服を行っていた。就寝中に咳嗽が出現した後から右側腹部痛と腹部腫瘤を自覚し当院へ救急搬送された。来院時, 意識は清明でバイタルサインは安定していた。身体所見では右上腹部に腫瘤性病変と皮下出血痕を認めていた。造影CTで右腹直筋に造影剤の漏出を認めたが保存的加療を選択し, 症状の増悪なく経過して第6病日に軽快退院した。【考察】抗血栓療法中に突然生じる腹部症状のなかには, まれながら本疾患も考慮する必要がある。また, 腹直筋はその解剖学的特徴から上腹部では前鞘だけでなく後鞘, 腱画が存在するため, 造影剤の漏出があっても保存的に加療できる可能性がある。
ISSN:0287-301X
2434-2580
DOI:10.24697/jaamkanto.41.4_418