体位変換による保存的加療で良好な経過を辿ったupside down stomachの1例

88歳の女性.腰椎圧迫骨折,胃穿孔の既往がある.前日から持続する嘔吐を主訴として当院救急外来を受診した.受診時も嘔吐しており,心窩部から左側腹部にかけて自発痛・圧痛を認めた.また,著明な亀背であった.CTでは胃穹窿部は腹腔内に位置していたが,体部から前庭部が胸腔内に脱出しており,多量の胃内容物を確認した.食道裂孔ヘルニアに胃軸捻転を合併したupside down stomachと診断した.手術の説明を行ったが希望せず,保存的加療で経過をみる方針となった.胃管留置,禁食・補液管理で症状の改善を認めた.待機的に上部消化管内視鏡検査を行い,軸捻転の解除が確認できたため胃管を抜去した.食物通過の補助,...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 54; no. 1; pp. 81 - 86
Main Authors 大野, 一将, 小原, 聡将, 井上, 慎一郎, 神﨑, 恒一, 長谷川, 浩, 宮城島, 慶
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.01.2017
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.54.81

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Summary:88歳の女性.腰椎圧迫骨折,胃穿孔の既往がある.前日から持続する嘔吐を主訴として当院救急外来を受診した.受診時も嘔吐しており,心窩部から左側腹部にかけて自発痛・圧痛を認めた.また,著明な亀背であった.CTでは胃穹窿部は腹腔内に位置していたが,体部から前庭部が胸腔内に脱出しており,多量の胃内容物を確認した.食道裂孔ヘルニアに胃軸捻転を合併したupside down stomachと診断した.手術の説明を行ったが希望せず,保存的加療で経過をみる方針となった.胃管留置,禁食・補液管理で症状の改善を認めた.待機的に上部消化管内視鏡検査を行い,軸捻転の解除が確認できたため胃管を抜去した.食物通過の補助,再発防止目的として食後の体位変換(消化管の走行にしたがって食後に右側臥位,その後に腹臥位をとる)を指導し,食事を再開したところ症状の発現がなかったため自宅に退院した.upside down stomachの治療は手術適応となることが多いが,高齢者では内視鏡的整復後に胃壁固定を行う方法や,整復のみで保存的に経過を観察するといった方法が報告がされている.しかし,再発予防を目的とし,食後の体位変換を指導した報告は少なく教訓的と考えられたため,ここに報告する.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.54.81