膝前十字靭帯損傷後のアスレティックリハビリテーションにおける等速性筋力の評価と特異性
従来より実施されている等速性筋力評価における欠点を補う新たな方法として, 各角速度における健常者の筋力の平均値を基準値とし, 基準値に対する割合で各筋力を評価する基準値比による評価法を考案した.本評価法を用い, 膝前十字靭帯 (以下ACLと略す) 再建術後のスポーツ選手25名を対象として, 競技復帰に至るまでの筋力回復の推移を経時的に評価した.基準値比の採用により, 各角速度における筋力回復度が評価尺度を一定にして明瞭に比較することが可能となった.追跡調査の結果, 各角速度とも運動機能レベルの改善に伴い筋力の回復がみられるものの, 全ての運動機能レベルに共通して角速度60度/秒における値が最も...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 60; no. 1; pp. 69 - 79 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
28.02.2000
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Subjects | |
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.60.69 |
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Summary: | 従来より実施されている等速性筋力評価における欠点を補う新たな方法として, 各角速度における健常者の筋力の平均値を基準値とし, 基準値に対する割合で各筋力を評価する基準値比による評価法を考案した.本評価法を用い, 膝前十字靭帯 (以下ACLと略す) 再建術後のスポーツ選手25名を対象として, 競技復帰に至るまでの筋力回復の推移を経時的に評価した.基準値比の採用により, 各角速度における筋力回復度が評価尺度を一定にして明瞭に比較することが可能となった.追跡調査の結果, 各角速度とも運動機能レベルの改善に伴い筋力の回復がみられるものの, 全ての運動機能レベルに共通して角速度60度/秒における値が最も低く, 特に競技復帰時の筋力は他の測定速度に比べ, 10~28%の回復の遅れが認められた.これらのことから, 膝関節損傷後の筋力回復を等速性筋力で評価する場合には, 単一の速度のみでなく各速度における回復のバランスを評価することが有効であり, ACL損傷後のアスレティックリハビリテーションにおいて, 特に競技復帰時には, 角速度60度/秒における低速域の筋力回復不全の存在に留意する必要があることが示唆された.特定の速度域における特異的な筋力低下の原因には, アイソキネティックトレーニングの実施速度による影響や, 運動時の損傷膝の不安感残存による影響などが考えられる. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.60.69 |