亜熱帯表層植物プランクトン群集に対する海洋深層水の肥沃化効果

水産生物資源の増産, 地球温暖化減速のための大気中二酸化炭素の吸収, 海洋深層水の効率的な資源利用などで, 貧栄養な表層水へ富栄養な海洋深層水を添加して植物プランクトンの生産を加速することが真剣に考えられている. そのためには, 実際に海域を肥沃化する前に現場モデル実験や数値シミュレーションによる効果予測が必要である. 特に, 深層水によってもたらされる栄養塩類量とそれによる植物プランクトンの生産増加 (一次生産) 効果の定量把握が重要である. 亜熱帯外洋の試水を用いた屋外培養実験を整理した結果, クロロフィルα濃度の比増殖速度は0.3日-1/μM-硝酸態窒素で増加し, クロロフィルα濃度の収...

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Published in海洋深層水研究 Vol. 4; no. 1; pp. 29 - 37
Main Authors 川延, 京子, 高橋, 正征, 池谷, 透
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 海洋深層水利用学会 01.09.2003
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ISSN1345-8477
1884-958X
DOI10.11174/dowas2000.4.1_29

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Summary:水産生物資源の増産, 地球温暖化減速のための大気中二酸化炭素の吸収, 海洋深層水の効率的な資源利用などで, 貧栄養な表層水へ富栄養な海洋深層水を添加して植物プランクトンの生産を加速することが真剣に考えられている. そのためには, 実際に海域を肥沃化する前に現場モデル実験や数値シミュレーションによる効果予測が必要である. 特に, 深層水によってもたらされる栄養塩類量とそれによる植物プランクトンの生産増加 (一次生産) 効果の定量把握が重要である. 亜熱帯外洋の試水を用いた屋外培養実験を整理した結果, クロロフィルα濃度の比増殖速度は0.3日-1/μM-硝酸態窒素で増加し, クロロフィルα濃度の収量は1.48μg/μM-硝酸態窒素となった. これらの変化は表層水中にごく僅かに存在していた珪藻類を主とする植物プランクトンが増加したためで, ナノ・ミクロ植物プランクトンの割合は20%以下から80%前後に増加し, クロロフィルα濃度の増加と共に消費されたSi/N比は0.87に達した. ここで得られた速度や係数は深層水による海域肥沃化効果のモデル推定に役立つと考えられる.
ISSN:1345-8477
1884-958X
DOI:10.11174/dowas2000.4.1_29