単一宿主内感染数理モデルによるStreptococcus mutans感染の生態学的分析の試み

本研究は未解明な点の多い Streptococcus mutans(MS)感染動態を記述する単一宿主内感染数理モデルを構築し,感染機序および特定感染源由来菌株の生存条件について生態学的視点から検討を試みることを目的とする.  シミュレーションの結果,構築されたモデルは MS 感染過程とその後の菌ポピュレーションの動態をうまく説明できた.  モデルによる分析から,以下のことが示唆された.  (1) 感染 MS ポピュレーションの動態は伝達菌量(m x0),環境収容力(K, K*)および競争力(α)のバランスにより決定される.  (2) 特に,m x0 が重要な因子で,一定の年齢期に感染が起こるよ...

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Published inJapan Journal of Medical Informatics Vol. 28; no. 4; pp. 177 - 185
Main Author 奈良, 一彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本医療情報学会 2008
Japan Association for Medical Informatics
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ISSN0289-8055
2188-8469
DOI10.14948/jami.28.177

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Summary:本研究は未解明な点の多い Streptococcus mutans(MS)感染動態を記述する単一宿主内感染数理モデルを構築し,感染機序および特定感染源由来菌株の生存条件について生態学的視点から検討を試みることを目的とする.  シミュレーションの結果,構築されたモデルは MS 感染過程とその後の菌ポピュレーションの動態をうまく説明できた.  モデルによる分析から,以下のことが示唆された.  (1) 感染 MS ポピュレーションの動態は伝達菌量(m x0),環境収容力(K, K*)および競争力(α)のバランスにより決定される.  (2) 特に,m x0 が重要な因子で,一定の年齢期に感染が起こるように見える原因が調査対象における菌伝達係数(m)の分布による可能性がある.  (3) どの感染源由来の菌株が優占菌株になるかは,上記 4 つの因子の相互作用で決まる.  (4) 母親由来の菌株しか検出されない場合でも,条件によっては検出レベル以下で別の感染源由来の菌株が共存している可能性がある.
ISSN:0289-8055
2188-8469
DOI:10.14948/jami.28.177