革新的技術の創出を促進する研究開発拠点の新設に関する考察

研究開発拠点の新設は,イノベーション創出を目指した戦略的行動として多くの企業によって実行されている。これまで,研究開発拠点の立地や複数拠点による研究開発の空間的分業がイノベーションの成果に及ぼす影響に関して,主に企業間での比較が行われてきた。一方で,研究開発拠点の新設はその中で働く研究者のイノベーション活動に影響を及ぼすと推測されるが,そのような観点での検証はこれまでほとんど行われていない。本研究では,富士ゼロックス株式会社(現 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)を対象として,新たな立地での研究開発拠点の新設が研究者のイノベーション活動に及ぼす影響を定量的に検証した。その結果,新設の...

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Published in研究 技術 計画 Vol. 40; no. 2; pp. 228 - 242
Main Authors 吉岡(小林) 徹, 牧 兼充, 吉田 公亮
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 研究・イノベーション学会 31.08.2025
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ISSN0914-7020
2432-7123
DOI10.20801/jsrpim.40.2_228

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Summary:研究開発拠点の新設は,イノベーション創出を目指した戦略的行動として多くの企業によって実行されている。これまで,研究開発拠点の立地や複数拠点による研究開発の空間的分業がイノベーションの成果に及ぼす影響に関して,主に企業間での比較が行われてきた。一方で,研究開発拠点の新設はその中で働く研究者のイノベーション活動に影響を及ぼすと推測されるが,そのような観点での検証はこれまでほとんど行われていない。本研究では,富士ゼロックス株式会社(現 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)を対象として,新たな立地での研究開発拠点の新設が研究者のイノベーション活動に及ぼす影響を定量的に検証した。その結果,新設の研究開発拠点に移動した研究者は,拠点内ならびに他拠点の研究者とのコラボレーションが促進され,出願特許の技術分野の多様性が増加したことがわかった。また,移動した研究者は,出願特許数ならびに審査官被引用数が増加したことがわかった。さらに,媒介分析の結果,コラボレーションと技術分野の多様性の増加が,結果として,出願特許数と審査官被引用数の増加につながっていることがわかった。
ISSN:0914-7020
2432-7123
DOI:10.20801/jsrpim.40.2_228