教科教育現場におけるIE的思考導入の必要性
産業界では, 現状の作業を時間的側面から定量的に解析し, 改善に繋げる問題解決型手法の一つとして, IE(Industrial Engineering)という概念が, 特に製造業を中心に普及している。教育界では, 「受動的学習」から「能動的学習」へと学習スタイルの変革が進展している一方で, 時間的側面に着目し, 能動的学習の教育効果を増大させるために授業構成や授業体制の改善をどう図るかという議論を科学的に進めている事例は乏しい。今回, 能動的学習を意識した実態検証用授業として, 「熱量保存則」の実験に取り組むグループワークを実施し, IE的思考に基づき学習者の動作分析を行った。その結果, 授業...
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Published in | 理科教育学研究 Vol. 59; no. 1; pp. 97 - 104 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本理科教育学会
31.07.2018
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Subjects | |
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ISSN | 1345-2614 2187-509X |
DOI | 10.11639/sjst.18008 |
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Summary: | 産業界では, 現状の作業を時間的側面から定量的に解析し, 改善に繋げる問題解決型手法の一つとして, IE(Industrial Engineering)という概念が, 特に製造業を中心に普及している。教育界では, 「受動的学習」から「能動的学習」へと学習スタイルの変革が進展している一方で, 時間的側面に着目し, 能動的学習の教育効果を増大させるために授業構成や授業体制の改善をどう図るかという議論を科学的に進めている事例は乏しい。今回, 能動的学習を意識した実態検証用授業として, 「熱量保存則」の実験に取り組むグループワークを実施し, IE的思考に基づき学習者の動作分析を行った。その結果, 授業時間に占める付加価値時間の割合が6割に届かず, 付加価値を生まない付帯時間などの削減余地の大きさが明らかとなった。また, 個人の付加価値時間が短いほど, あるいは, 個人の付加価値時間が所属グループの平均付加価値時間に比べて短いほど, 学習内容の理解度合いが低下することが示された。更に, 作業の推進に優れるグループこそ付加価値のない手待ち時間を形成してしまう皮肉な状況も露呈した。本研究により, 付加価値時間の増大と集団内(グループ内, 及びグループ間)での付加価値時間のムラ低減といった改善点が明らかとなり, 教科教育現場にIE的思考を導入する必要性が示唆された。 |
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ISSN: | 1345-2614 2187-509X |
DOI: | 10.11639/sjst.18008 |