理科授業におけるインタラクションに関する研究:コンセプトマップを表現のリソースとして使用した協同的な学習を事例にして

最近の認知科学や教育学においては,「協同的な学習」についての議論が行われてきている。しかしながら,理科教育における認知論的な研究は,子どもたちの協同的な学習にあまり焦点をあててこなかった。本研究の目的は,表現のリソースとしてコンセプトマップを使用した102名の子どもたちが行う協同的な学びにおけるインタラクションのあり方を「状況的認知論」の立場から分析することであった。それらの結果,以下の4点が指摘できた。(1) 子どもたちは,協同的な学びにおいてその意義を認め,学習に対してポジテイヴに作用する感情を抱いていた。(2) 子どもたちは,協同的な学びにおいて新たなアイデアを想起したり,相手からアイデ...

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Published in日本理科教育学会研究紀要 Vol. 37; no. 3; pp. 1 - 13
Main Authors 野上, 智行, 山口, 悦司, 稲垣, 成哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本理科教育学会 1997
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ISSN0389-9039
2433-0140
DOI10.11639/formersjst.37.3_1

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Summary:最近の認知科学や教育学においては,「協同的な学習」についての議論が行われてきている。しかしながら,理科教育における認知論的な研究は,子どもたちの協同的な学習にあまり焦点をあててこなかった。本研究の目的は,表現のリソースとしてコンセプトマップを使用した102名の子どもたちが行う協同的な学びにおけるインタラクションのあり方を「状況的認知論」の立場から分析することであった。それらの結果,以下の4点が指摘できた。(1) 子どもたちは,協同的な学びにおいてその意義を認め,学習に対してポジテイヴに作用する感情を抱いていた。(2) 子どもたちは,協同的な学びにおいて新たなアイデアを想起したり,相手からアイデアを取り入れたりしていた。(3) 子どもたちは,協同的な学びにおける「ずれ」を認めていた。(4) 「熟達者―初心者」ペアにおいても,対話的な学びが成立していた。分析の結果を考察することから,理科授業のあり方について有益な示唆を得ることができた。
ISSN:0389-9039
2433-0140
DOI:10.11639/formersjst.37.3_1