日本と諸外国の減塩政策と食塩摂取量の推移の比較:ナラティブレビュー

目的 日本の食塩摂取量は減少傾向にあるものの,諸外国と比較して高いことが知られており,より一層食塩摂取量を削減するための取組が必要である。本研究は,日本における今後の減塩政策の検討に寄与することを目的とし,諸外国の減塩政策を調査するとともに食塩摂取の推移の情報を整理した。方法 減塩政策および食塩摂取の目標値や摂取量に関する情報は,各国の機関ホームページ,論文,報告書から収集した。対象国はWHOのほか,G7加盟国である日本,アメリカ,カナダ,イギリス,イタリア,フランス,ドイツと,食文化が日本と近いアジア圏の中国,韓国とした。目標値および摂取量はナトリウムのみを示している国では,ナトリウムに2....

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Bibliographic Details
Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 72; no. 8; pp. 549 - 557
Main Authors 岡田 知佳, 中村 美詠子, 虎見 昂輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2025
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.24-122

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Summary:目的 日本の食塩摂取量は減少傾向にあるものの,諸外国と比較して高いことが知られており,より一層食塩摂取量を削減するための取組が必要である。本研究は,日本における今後の減塩政策の検討に寄与することを目的とし,諸外国の減塩政策を調査するとともに食塩摂取の推移の情報を整理した。方法 減塩政策および食塩摂取の目標値や摂取量に関する情報は,各国の機関ホームページ,論文,報告書から収集した。対象国はWHOのほか,G7加盟国である日本,アメリカ,カナダ,イギリス,イタリア,フランス,ドイツと,食文化が日本と近いアジア圏の中国,韓国とした。目標値および摂取量はナトリウムのみを示している国では,ナトリウムに2.54を乗じて食塩相当量も同時に示した。削減率は,政策により減少した割合を示すため,日本とアメリカでは政策の評価に使われたベースラインと評価年の値を用いた。残りの国ではベースラインと評価年が確認できなかったため,政策が行われた期間の前後の最も近い年の値を用いて計算した。結果 今回の研究において食塩摂取量の範囲は6.9 g/d(カナダ)から10.2 g/d(中国)であった。食塩の摂取源は,アメリカ,カナダ,イギリス,イタリア,フランス,ドイツでは加工食品や調理済み食品が多く,日本,韓国,中国では家庭食からの食塩摂取が多かった。各国の減塩政策で食塩又はナトリウムの摂取目標が設定されており,最も低い値が5.8 g/d(カナダ)であり,最も高い値が9.9 g/d(韓国)であった。韓国とイギリスでは企業へのアプローチだけでなく,主要な摂取源である家庭へのアプローチを合わせて行っていた。食塩摂取量はすべての国で減少傾向であり,とくに韓国,イギリスは高い削減率を示した(それぞれ32.2%,14.8%)。一方でアメリカ,日本の削減率は,他国と比べて低かった(それぞれ2.2%,4.7%)。結論 日本と諸外国の食塩摂取の推移,目標値,主な摂取源,政策について比較したところ,経年比較で食塩摂取量の削減率が高い国では,各国の食事の実態に合わせて企業と家庭のそれぞれに向けて政策を推進していたことが明らかとなった。日本における今後の減塩政策は,企業と家庭の双方へのアプローチの強化と日本の食文化に応じた取り組みを推進することが重要である。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.24-122