性別と年齢を考慮した生活保護受給者における入院受療状況の疾病分類別分析

目的 生活保護受給者における入院受療状況と日本全体の入院受療状況を性別に年齢調整を行った上で傷病大分類別に比較をすることで,生活保護受給者における入院医療の疾病構造の特徴を明らかにする。方法 観察対象集団を生活保護受給者,基準集団を日本全体とした間接法による年齢調整を性別に行い,傷病分類(ICD-10(2013年版)による大分類)別に標準化入院者数比を算出した。算出には公開されている政府統計のみを用いた。具体的には,厚生労働省による令和2年患者調査による性別・年齢階級別・傷病分類別の入院受療率,令和2年度被保護者調査による性別・年齢階級別被保護実人員,令和2年医療扶助実態調査による傷病分類別の...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 72; no. 4; pp. 272 - 283
Main Authors 渡邉, 英之, 桑木, 光太郎, 谷原, 真一, Yupeng, He, 太田, 充彦, 李, 媛英, 松永, 眞章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2025
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.24-068

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Summary:目的 生活保護受給者における入院受療状況と日本全体の入院受療状況を性別に年齢調整を行った上で傷病大分類別に比較をすることで,生活保護受給者における入院医療の疾病構造の特徴を明らかにする。方法 観察対象集団を生活保護受給者,基準集団を日本全体とした間接法による年齢調整を性別に行い,傷病分類(ICD-10(2013年版)による大分類)別に標準化入院者数比を算出した。算出には公開されている政府統計のみを用いた。具体的には,厚生労働省による令和2年患者調査による性別・年齢階級別・傷病分類別の入院受療率,令和2年度被保護者調査による性別・年齢階級別被保護実人員,令和2年医療扶助実態調査による傷病分類別の入院件数を用いた。結果 年齢調整(間接法)後の男女合わせた全傷病における標準化入院者数比は1.49であった。標準化入院者数比が高い傷病分類は,男女とも「Ⅴ.精神及び行動の障害」(標準化入院者数比,以下同じ),(男:4.06,女:3.45),「Ⅳ.内分泌,栄養及び代謝疾患」(男:2.40,女:1.47)の順であった。一方,標準化入院者数比が低い傷病分類については,男性では「ⅩⅥ.周産期に発生した病態」(0.43),「Ⅶ.眼及び付属器の疾患」(0.44),の順であり,女性では「ⅩⅤ.妊娠,分娩及び産じょく」(0.17),「Ⅶ.眼及び付属器の疾患」(0.27)の順であった。結論 年齢調整を行った生活保護受給者の入院受療状況を検討した結果,傷病全体においては生活保護受給者の方が日本全体より高くなっていた。しかし,傷病分類別の検討では日本全体より高いものと低いものの両方が存在していた。生活保護受給者の医療扶助の状況を評価する上では,生活保護受給者数の年齢構成が日本全体とは大きく異なることを考慮した上で,疾患別の検討を行うことが望ましい。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.24-068