自由意志に関する心理学的知見およびその限界

自由意志の問題は,哲学などの領域において長らく議論されてきた.(社会)心理学の領域でも,自由意志の問題が議論の対象となることがある.それはおそらく,心理学の研究は自由意志の存在を基本的に仮定しつつも,一部の研究結果や研究の背景にある考え方が自由意志の存在を否定しているように感じられるからである.本論文はこうした自由意志の問題に関連しうる心理学の研究や考え方を紹介したうえで,それらにより自由意志の存在は否定されるのか,またなぜ自由意志の存在が否定されると捉えられうるのかを考察する.さらに,自由意志(エイジェンシー)に関する問題は犯罪社会学(離脱研究)においても議論されており,本論文はそれぞれの領...

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Published in犯罪社会学研究 Vol. 48; pp. 36 - 46
Main Author 渡辺, 匠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本犯罪社会学会 20.10.2023
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ISSN0386-460X
2424-1695
DOI10.20621/jjscrim.48.0_36

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Summary:自由意志の問題は,哲学などの領域において長らく議論されてきた.(社会)心理学の領域でも,自由意志の問題が議論の対象となることがある.それはおそらく,心理学の研究は自由意志の存在を基本的に仮定しつつも,一部の研究結果や研究の背景にある考え方が自由意志の存在を否定しているように感じられるからである.本論文はこうした自由意志の問題に関連しうる心理学の研究や考え方を紹介したうえで,それらにより自由意志の存在は否定されるのか,またなぜ自由意志の存在が否定されると捉えられうるのかを考察する.さらに,自由意志(エイジェンシー)に関する問題は犯罪社会学(離脱研究)においても議論されており,本論文はそれぞれの領域における自由意志(エイジェンシー)に対する問題意識が少なくとも部分的に共通しているのではないかという可能性を提示する.
ISSN:0386-460X
2424-1695
DOI:10.20621/jjscrim.48.0_36