術後重度な嚥下障害を来した小児咽頭後間隙神経鞘腫の1例

神経鞘腫は末梢神経Schwann細胞由来の被膜を有する境界明瞭な良性腫瘤で,頸部腫瘤の原因としてはしばしば認められるが,小児における咽頭後間隙神経鞘腫の治療例は本邦では報告例がない。症例は14歳男児。当院初診の14日前頃に断続的な左耳痛を自覚し近医耳鼻咽喉科を受診したところ,咽頭後壁左側の腫脹を認めたため精査目的に近医大学病院を紹介受診した。CT検査にて咽頭後間隙腫瘤を認め,精査加療目的にx日に当院に紹介受診となった。造影CT,造影MRI検査を施行したところ,中咽頭後壁左側に内部不均一で一部造影効果を伴う境界明瞭辺縁平滑な最大縦径38mm大の腫瘤性病変を認めた。術前診断としては迷走神経や舌咽神...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 65; no. 5; pp. 200 - 206
Main Authors 小島, 博己, 黒田, 健斗, 佐久間, 信行, 結束, 寿, 志村, 英二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.10.2022
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo.65.5_200

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Summary:神経鞘腫は末梢神経Schwann細胞由来の被膜を有する境界明瞭な良性腫瘤で,頸部腫瘤の原因としてはしばしば認められるが,小児における咽頭後間隙神経鞘腫の治療例は本邦では報告例がない。症例は14歳男児。当院初診の14日前頃に断続的な左耳痛を自覚し近医耳鼻咽喉科を受診したところ,咽頭後壁左側の腫脹を認めたため精査目的に近医大学病院を紹介受診した。CT検査にて咽頭後間隙腫瘤を認め,精査加療目的にx日に当院に紹介受診となった。造影CT,造影MRI検査を施行したところ,中咽頭後壁左側に内部不均一で一部造影効果を伴う境界明瞭辺縁平滑な最大縦径38mm大の腫瘤性病変を認めた。術前診断としては迷走神経や舌咽神経由来の神経鞘腫などの良性腫瘍も疑われたものの,受診の1週間程度前からいびきの増大を家族から指摘されるなど,急速に増大している可能性が否定できず,横紋筋肉腫や滑膜肉腫等の悪性疾患も考慮されたため,小児科,放射線科,形成外科と協議し,頸部外切開にて腫瘍の全摘出術を行う方針とした。術後の病理組織検査では,神経鞘腫の診断であった。術後重度な嚥下障害を認めたが,嚥下リハビリテーションにより改善を認めた。本症例のように,悪性疾患(特に肉腫)が疑われる場合は被膜間摘出が困難であるため,術前に神経脱落症状についての十分な説明と同意が重要であると考えた。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.65.5_200