重症患者の包括的気管切開管理:ICUから病棟まで

気道閉塞に対する治療法であった気管切開は,ポリオ大流行を契機に陽圧換気時の長期気道管理法として確立した。重症患者の生存率向上に伴い,近年,気管切開患者の管理はICU のみならず一般病棟や在宅医療にまで拡大し,長期的なQOLを考慮した包括的管理が求められている。気管カニューレ閉塞や逸脱の予防をはじめとする安全対策は,特に一般病棟では標準化されておらず,喫緊の課題である。気管カニューレ抜去は,行うまでに日数を要するものの,そのアルゴリズムが確立しておらず,急性期病院から転出後にはほとんど行われていないのが現状である。カニューレ未抜去と患者転帰不良との関連が示唆されており,多職種気管切開管理チームに...

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Published in日本集中治療医学会雑誌 Vol. 31; no. 5; pp. 493 - 501
Main Authors 武居, 哲洋, 藤澤, 美智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本集中治療医学会 01.09.2024
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ISSN1340-7988
1882-966X
DOI10.3918/jsicm.31_493

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Summary:気道閉塞に対する治療法であった気管切開は,ポリオ大流行を契機に陽圧換気時の長期気道管理法として確立した。重症患者の生存率向上に伴い,近年,気管切開患者の管理はICU のみならず一般病棟や在宅医療にまで拡大し,長期的なQOLを考慮した包括的管理が求められている。気管カニューレ閉塞や逸脱の予防をはじめとする安全対策は,特に一般病棟では標準化されておらず,喫緊の課題である。気管カニューレ抜去は,行うまでに日数を要するものの,そのアルゴリズムが確立しておらず,急性期病院から転出後にはほとんど行われていないのが現状である。カニューレ未抜去と患者転帰不良との関連が示唆されており,多職種気管切開管理チームによる気管カニューレ抜去戦略の確立や安全対策の啓発は,患者転帰の改善や医療費の削減をもたらす可能性がある。海外でのいくつかの先進的な取り組みを参考に,今後本邦でも気管切開患者の長期的かつ体系的な管理体制を整備することが望まれる。
ISSN:1340-7988
1882-966X
DOI:10.3918/jsicm.31_493