解離性大動脈瘤術後遷延痛に東洋医学的治療が奏功した1症例

術後遷延痛は時に西洋医学的治療で難渋することがある。患者は解離性大動脈瘤人工血管置換術を受けた39歳男性。痛みは主として胸骨正中部で,その皮膚は瘢痕・ケロイド化しアロディニアがみられた。プレガバリン,デュロキセチン,トラムセット®を服用するも痛みの改善なく,術後4ヵ月半で漢方治療と鍼治療(山元式新頭鍼療法とUnblocking 法)を開始した。瘀血,胸脇苦満,心下痞鞕より,桂枝茯苓丸加薏苡仁および柴胡桂枝湯(ツムラ®:7.5g 分3)を処方したが痛みの改善がなかったので煎じで黄耆桂枝五物湯を追加した。その構成生薬の黄耆を3~10g/日,冷えがみられたため附子を4~6g/日に増加したところ,痛み...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 69; no. 4; pp. 390 - 395
Main Authors 松本, 美由季, 武冨, 麻恵, 大嶽, 浩司, 信太, 賢治, 小林, 玲音, 福田, 悟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2018
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ISSN0287-4857
1882-756X
DOI10.3937/kampomed.69.390

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Summary:術後遷延痛は時に西洋医学的治療で難渋することがある。患者は解離性大動脈瘤人工血管置換術を受けた39歳男性。痛みは主として胸骨正中部で,その皮膚は瘢痕・ケロイド化しアロディニアがみられた。プレガバリン,デュロキセチン,トラムセット®を服用するも痛みの改善なく,術後4ヵ月半で漢方治療と鍼治療(山元式新頭鍼療法とUnblocking 法)を開始した。瘀血,胸脇苦満,心下痞鞕より,桂枝茯苓丸加薏苡仁および柴胡桂枝湯(ツムラ®:7.5g 分3)を処方したが痛みの改善がなかったので煎じで黄耆桂枝五物湯を追加した。その構成生薬の黄耆を3~10g/日,冷えがみられたため附子を4~6g/日に増加したところ,痛みは徐々に改善し漢方治療開始約20ヵ月後に痛みは完全に消失した。鍼治療の効果も痛みの改善と共に延長した。黄耆桂枝五物湯加附子と鍼による東洋医学的治療は,冷えを有する術後遷延痛患者に有効であることが示唆された。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.69.390