ベイジアンネットワークによる確率的アプローチと行動変容支援技術への応用
現在解決が求められている社会課題の多くは人の関与が必要であるため,解決方法それだけでは解決が難しい.例えば健康問題であれば健康の状態が観測できる技術やそれを改善する方法ができても,実際の対象者が,自分の状態を観測する行動をとらず,また観測していても改善する方法を実行しないといった現状がある.持続的社会の実現のために解決が望まれる環境問題や身近な生活(まちづくり)の問題においても,いかに先端的なリサイクル技術や仕組みが開発されても,それらを活用するためには生活者が廃品回収などの行動を日常生活の中で持続することが重要である.まちづくりの取り組みにおいても,行政や企業の努力だけでは十分ではなく,その...
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Published in | 保健医療科学 Vol. 73; no. 4; pp. 283 - 291 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
国立保健医療科学院
31.10.2024
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Subjects | |
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ISSN | 1347-6459 2432-0722 |
DOI | 10.20683/jniph.73.4_283 |
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Summary: | 現在解決が求められている社会課題の多くは人の関与が必要であるため,解決方法それだけでは解決が難しい.例えば健康問題であれば健康の状態が観測できる技術やそれを改善する方法ができても,実際の対象者が,自分の状態を観測する行動をとらず,また観測していても改善する方法を実行しないといった現状がある.持続的社会の実現のために解決が望まれる環境問題や身近な生活(まちづくり)の問題においても,いかに先端的なリサイクル技術や仕組みが開発されても,それらを活用するためには生活者が廃品回収などの行動を日常生活の中で持続することが重要である.まちづくりの取り組みにおいても,行政や企業の努力だけでは十分ではなく,その地域に住む生活者が主体的,持続的に関わることが必要不可欠になっている.つまり,人が行動を主体的に変えること,「行動変容」が問題解決のために極めて重要になっている. こうしたことから近年,行動変容を促す戦略・手法として,行動経済学的手法や「ナッジ(Nudge)」と呼ばれるアプローチや,生活者を理解する行動観察やマーケティング手法の活用が注目され,そのために消費者の購買行動履歴データやインターネット閲覧行動の履歴データなどのビッグデータ分析・活用が期待されている.これらは,従来から各分野において長い歴史があるが,最近のデジタル技術の普及にともなって,データによる記録・集積と,データサイエンスや人工知能技術による集積したデータの活用が一般的になったことで共通の枠組みとしてとらえることができるようになってきた.本稿では,人の行動をデータとして記録・集積し,そのデータを活用する枠組みで「行動変容」を扱う確率的アプローチとベイジアンネットワークと確率的潜在意味解析,それを使った行動変容支援技術への応用事例を紹介する. |
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ISSN: | 1347-6459 2432-0722 |
DOI: | 10.20683/jniph.73.4_283 |