中深度処分における隆起と侵食の考え方

我が国の中深度処分における隆起と侵食の考え方について整理した.河川の上流および中流域となる内陸部の河川においては,氷期には河床への堆積が進み,間氷期には河床が侵食される.地殻変動が生じている地域でこの現象が繰り返されることにより,同じ気候条件下で同じ河床縦断形が再現される河川では,約10万年間の気候変動1サイクルを超える長期間で,侵食速度と隆起速度が等しくなる.しかし,間氷期の期間のみでは,侵食速度が隆起速度よりもはやくなる.したがって,中深度処分の評価期間である10万年以下の短期間では,間氷期の最大侵食深が廃棄物埋設地に対して大きな影響を与える可能性がある.一方,河川の下流域となる海岸部にお...

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Published in原子力バックエンド研究 Vol. 29; no. 2; pp. 119 - 129
Main Authors 廣田, 明成, 伊藤, 一充
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会 15.12.2022
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ISSN1884-7579
1884-7579
DOI10.3327/jnuce.29.2_119

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Summary:我が国の中深度処分における隆起と侵食の考え方について整理した.河川の上流および中流域となる内陸部の河川においては,氷期には河床への堆積が進み,間氷期には河床が侵食される.地殻変動が生じている地域でこの現象が繰り返されることにより,同じ気候条件下で同じ河床縦断形が再現される河川では,約10万年間の気候変動1サイクルを超える長期間で,侵食速度と隆起速度が等しくなる.しかし,間氷期の期間のみでは,侵食速度が隆起速度よりもはやくなる.したがって,中深度処分の評価期間である10万年以下の短期間では,間氷期の最大侵食深が廃棄物埋設地に対して大きな影響を与える可能性がある.一方,河川の下流域となる海岸部においては,侵食基準面となる海面高度が低下する氷期において,侵食速度が隆起速度よりもはやくなる.したがって,10万年以下の短期間では,氷期の最大侵食深が廃棄物埋設地に対して大きな影響を与える可能性がある.加えて,過去の研究成果から廃棄物埋設地周辺の隆起量を評価する場合においては,採用するデータの時間スケールを考慮し,適用可能性について検討することが重要となる.
ISSN:1884-7579
1884-7579
DOI:10.3327/jnuce.29.2_119