老人保健施設入所中に歯科受診した老年患者の実態
老人保健施設入所中に歯科受診した老年患者101名の全身状態, ADLの評価と口腔清掃能力との関係, 歯科処置内容, 来院時の車椅子等の使用状況および歯科処置中断に至った原因を調査分析し, 老人医療における歯科医療の問題点の検討を行った。 対象者の性別は男性が27名 (26.7%) で女性が74名 (73.3%) であった。対象者全員が1つ以上の基礎疾患を有し, 1人平均2.6疾患に罹患していた。 全身的基礎疾患として痴呆が最も多く, 次いで脳血管障害, 高血圧症, 糖尿病, パーキンソニズム, 虚血性心疾患などの順であった。 当科での歯科処置として義歯の調整, 修理および新製が過半数 (55....
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Published in | 老年歯科医学 Vol. 15; no. 3; pp. 288 - 292 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年歯科医学会
31.03.2001
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Subjects | |
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ISSN | 0914-3866 1884-7323 |
DOI | 10.11259/jsg1987.15.288 |
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Summary: | 老人保健施設入所中に歯科受診した老年患者101名の全身状態, ADLの評価と口腔清掃能力との関係, 歯科処置内容, 来院時の車椅子等の使用状況および歯科処置中断に至った原因を調査分析し, 老人医療における歯科医療の問題点の検討を行った。 対象者の性別は男性が27名 (26.7%) で女性が74名 (73.3%) であった。対象者全員が1つ以上の基礎疾患を有し, 1人平均2.6疾患に罹患していた。 全身的基礎疾患として痴呆が最も多く, 次いで脳血管障害, 高血圧症, 糖尿病, パーキンソニズム, 虚血性心疾患などの順であった。 当科での歯科処置として義歯の調整, 修理および新製が過半数 (55.4%) を占め, 次いで根管治療 (12.9%), 修復・形成 (7.9%), 抜髄および抜歯 (5.0%) の順であった。 ADLの評価と日腔清掃能力との関係では, ADLの自立度が高いほど口腔清掃能力も高かった。 来院時自力で歩行できる患者は59名 (58.8%) で, この中には杖使用者3名 (3.0%) と歩行器使用者5名 (5.0%) が含まれていた。これに対し, 自力歩行できなかった患者は41名 (40.6%) で, その大部分は車椅子使用者 (40名, 39.6%) であった。 歯科処置を中断した患者は49.5%と高率で, その原因として体調不良, 経済的理由, 患者からの拒否および家族の理解不足などがあげられた。 以上の結果より, 老人保健施設入所中の老年患者の歯科治療においては, 全身的基礎疾患だけではなく患者の家庭環境等も十分に把握し, 家族との対話が極めて重要であることが示唆された。 |
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ISSN: | 0914-3866 1884-7323 |
DOI: | 10.11259/jsg1987.15.288 |