瘤化した異常動脈を伴った肺底動脈大動脈起始症の1例

症例は60歳代男性.血痰と咳嗽を主訴に近医を受診した.胸部CTで左下葉に腫瘤陰影を認めた.加えて下行大動脈の左側から起始し,左下葉に流入する直径20 mm大に瘤化した異常動脈を認めた.閉塞性肺炎を伴う肺底動脈大動脈起始症の診断で,左下葉切除術を施行した.異常動脈は横隔膜起始部付近から分枝し,胸腔からその根部を同定した.瘤化した異常動脈は血管基部をフェルト付きプロリン糸で縫合後,末梢側は自動縫合器で切離し,非吸収糸で断端部分をフェルトごと縫合した.手術時間312分,出血量165 mLであった.術後1年3ヵ月で血管切離断端に瘤化を認めていない.当院の過去11年間の肺底動脈大動脈起始症,肺分画症で異...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 38; no. 5; pp. 490 - 496
Main Authors 岩田, 尚, 山本, 裕崇, 清水, 里香, 白橋, 幸洋, 宮本, 祐作, 並木, 賢二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本呼吸器外科学会 15.07.2024
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.38.490

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Summary:症例は60歳代男性.血痰と咳嗽を主訴に近医を受診した.胸部CTで左下葉に腫瘤陰影を認めた.加えて下行大動脈の左側から起始し,左下葉に流入する直径20 mm大に瘤化した異常動脈を認めた.閉塞性肺炎を伴う肺底動脈大動脈起始症の診断で,左下葉切除術を施行した.異常動脈は横隔膜起始部付近から分枝し,胸腔からその根部を同定した.瘤化した異常動脈は血管基部をフェルト付きプロリン糸で縫合後,末梢側は自動縫合器で切離し,非吸収糸で断端部分をフェルトごと縫合した.手術時間312分,出血量165 mLであった.術後1年3ヵ月で血管切離断端に瘤化を認めていない.当院の過去11年間の肺底動脈大動脈起始症,肺分画症で異常血管を処理した症例は7例であった.異常動脈径の中央値は3.3 mmで,血管処理方法は非吸収糸で結紮後にlaparoscopic coagulating shearsまたは自動縫合器で切離していたが,瘤化した異常動脈に対する処理は血管の脆弱性を考慮した結紮切離方法が重要と考えられた.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.38.490