術後性後篩骨洞嚢胞による動眼神経単独麻痺を来した症例

後部副鼻腔である後篩骨洞や蝶形骨洞は,副鼻腔嚢胞の発生部位としては比較的稀であるが,視神経や上眼窩裂と隣接するため視力障害や眼球運動障害といった視器障害を来す可能性がある.しかし,視力障害を伴わず動眼神経麻痺単独で発症する症例は稀である.今回我々は,動眼神経単独麻痺を来した後篩骨洞嚢胞の症例を経験したので報告する.症例は,副鼻腔手術の既往がある78歳男性.頭痛,右眼瞼下垂,複視を主訴に当院を受診した.画像検査では,右後篩骨洞から前床突起にかけた嚢胞性病変および前床突起と上眼窩裂の境界の骨壁に菲薄化を認めたため,副鼻腔嚢胞の圧迫による動眼神経麻痺が考えられた.内視鏡下鼻副鼻腔手術による嚢胞開放術...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 67; no. 1; pp. 16 - 23
Main Authors 常見, 泰弘, 柏木, 隆志, 斎藤, 翔太, 中山, 次久, 阿久津, 誠, 春名, 眞一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.02.2024
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo.67.1_16

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Summary:後部副鼻腔である後篩骨洞や蝶形骨洞は,副鼻腔嚢胞の発生部位としては比較的稀であるが,視神経や上眼窩裂と隣接するため視力障害や眼球運動障害といった視器障害を来す可能性がある.しかし,視力障害を伴わず動眼神経麻痺単独で発症する症例は稀である.今回我々は,動眼神経単独麻痺を来した後篩骨洞嚢胞の症例を経験したので報告する.症例は,副鼻腔手術の既往がある78歳男性.頭痛,右眼瞼下垂,複視を主訴に当院を受診した.画像検査では,右後篩骨洞から前床突起にかけた嚢胞性病変および前床突起と上眼窩裂の境界の骨壁に菲薄化を認めたため,副鼻腔嚢胞の圧迫による動眼神経麻痺が考えられた.内視鏡下鼻副鼻腔手術による嚢胞開放術を行ったところ,翌日より自覚症状の改善傾向を認めた.術後2ヵ月で自覚症状は消失し,眼科的評価においても異常所見は認めなかった.さらに,術後2年間の経過観察でも内視鏡下に嚢胞は開放されていることが確認され,症状の再燃も認めなかった.本報告では,副鼻腔嚢胞による動眼神経単独麻痺を呈した過去の報告例を収集するとともに,動眼神経麻痺の機序に関する考察を行った.
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.67.1_16