幼児期における物理概念の揺らぎ:あり得ない現象への認識と魔法との関連

年少児(4歳児)・年長児(6歳児)に物の永続性課題(あり得る現象とあり得ない現象)を見せ,不思議に思ったかの評定と驚きの表情を基に,各現象を不思議に思うかどうかを調べた。その際,あり得ない現象の前に「魔法の国」の話をする魔法群を設定し,統制群と比較した。あり得る現象に対する評定や表情変化に有意な年齢差は見られなかったが,あり得ない現象に対しては評定に有意な年齢差が見られ,年少児より年長児の方があり得ない現象を見てより不思議だと思っていた。魔法群と統制群に有意な差は見られず,物理概念に及ぼす魔法の影響は見られなかった。また,物理概念と空想/現実を区別する能力との相関を調べたところ,空想的な絵の判...

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Published in発達心理学研究 Vol. 27; no. 3; pp. 212 - 220
Main Author 北田, 沙也加
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本発達心理学会 2016
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ISSN0915-9029
2187-9346
DOI10.11201/jjdp.27.212

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Summary:年少児(4歳児)・年長児(6歳児)に物の永続性課題(あり得る現象とあり得ない現象)を見せ,不思議に思ったかの評定と驚きの表情を基に,各現象を不思議に思うかどうかを調べた。その際,あり得ない現象の前に「魔法の国」の話をする魔法群を設定し,統制群と比較した。あり得る現象に対する評定や表情変化に有意な年齢差は見られなかったが,あり得ない現象に対しては評定に有意な年齢差が見られ,年少児より年長児の方があり得ない現象を見てより不思議だと思っていた。魔法群と統制群に有意な差は見られず,物理概念に及ぼす魔法の影響は見られなかった。また,物理概念と空想/現実を区別する能力との相関を調べたところ,空想的な絵の判断とあり得ない現象の評定に関連が見られたが,年齢を統制すると関連は見られなかった。つまり,現実世界と空想の世界の認識がまだ曖昧である年少児は,魔法の概念にかかわらずあり得ない現象もあり得ると思う傾向が強いが,年長児になると魔法の概念にかかわらず,あり得ない現象を現実世界のこととして認識し,不思議に思うようになることが示唆された。
ISSN:0915-9029
2187-9346
DOI:10.11201/jjdp.27.212