地域在住高齢者における前向き1年間に発生した転倒についての実態調査

【はじめに】高齢者における転倒はその後の活動量低下を招き、骨折に至る場合も含めて要支援・要介護状態を引き起こす主要な原因となる。転倒に関する調査研究は多く報告されているが、多くは転倒歴の聴取にとどまり、転倒のエピソードについて詳細に調査した報告は少ない。本研究では、地域在住高齢者の前向き1年間の転倒の新規発生について調査し、転倒の実態について明らかにすることを目的として実施した。【方法】対象は、3つの異なる市町に在住の65歳以上の地域在住高齢者 268人 (平均年齢77.0±6.2歳)であった。既往に脳血管障害を 有する者は除外した。ベースラインの測定にて、対象者の過去 1年間の転倒の有無、日...

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Published in日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 p. 102
Main Authors 大坂, 裕, 藤田, 大介, 松本, 浩実, 末廣, 忠延, 小原, 謙一, 大岸, 太一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 31.03.2025
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.3.Suppl.No.1.0_102

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Summary:【はじめに】高齢者における転倒はその後の活動量低下を招き、骨折に至る場合も含めて要支援・要介護状態を引き起こす主要な原因となる。転倒に関する調査研究は多く報告されているが、多くは転倒歴の聴取にとどまり、転倒のエピソードについて詳細に調査した報告は少ない。本研究では、地域在住高齢者の前向き1年間の転倒の新規発生について調査し、転倒の実態について明らかにすることを目的として実施した。【方法】対象は、3つの異なる市町に在住の65歳以上の地域在住高齢者 268人 (平均年齢77.0±6.2歳)であった。既往に脳血管障害を 有する者は除外した。ベースラインの測定にて、対象者の過去 1年間の転倒の有無、日常生活における運動頻度、疼痛箇所数、疾病数を聴取するとともに、快適歩行速度を測定した。ベースライン測定より前向き1年間の転倒の新規発生について追跡調査を実施した。統計学的解析として、前向き1年間の転倒新規発生の有無により転倒群と非転倒群に群分けし、各項目の2群間比較を行った。新規に発生した転倒の状況を聴取した内容について、KH Corder 3を用いてテキストマイニングを実施し、共起ネットワーク図を作成した。【結果】対象者のうち、1年間の前向き調査を完遂できたのは208人で あり、非転倒群177人、転倒群31人であった。転倒の新規発生件数は47件、31人中10人に複数回転倒が認められ、5人に骨 折の発生を認めた。転倒群と非転倒群において、歩行速度 (転倒群1.29±0.29m/s、非転倒群1.31±0.29m/s)、過去1年間の転倒歴を有する割合 (転倒群45.7%、非転倒群20.9%)に有意差を認め、それ以外の項目では有意差はみられなかった。共起ネットワーク図では (屋外、躓き、段差)、 (自宅、トイレ)、 (庭、前、手、転ぶ)、 (椅子、転落、尻もち)といったカテゴリ分類が示された。【考察】本研究における対象者は通いの場や健診を活用し運動習慣を有する比較的活動量の高い地域在住高齢者であり、前向き1年間の転倒の新規発生率は14.9%であった。前向き1年間に発生した転倒については屋外歩行中の段差への躓きの割合が多く、自宅トイレや庭など生活環境に起因したものを認め、今後の地域在住高齢者の転倒調査におけるリスク因子の抽出や特定に寄与できうる可能性が示唆された。【倫理的配慮】本研究は演者の所属する大学の倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には本研究の趣旨と目的を口頭と文書にて説明し、書面による同意を得てから研究を実施した。
Bibliography:P - 30
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.3.Suppl.No.1.0_102