六条オオムギの穂下部不稔小穂の形成要因の解析

北陸地域では六条オオムギの穂下部小穂が不稔となる現象が知られ,この地域の減収要因の一つであると指摘されている.冬作物であるオオムギは,冬期に幼穂の分化が開始する.積雪地においては,積雪の有無によって幼穂分化期間の環境が大きく変わる.下部不稔小穂数などの穂の形態が栽培環境によって異なる機構を明らかにする端緒として,本研究では幼穂分化期間を異なる環境で過ごした六条オオムギの成熟期の穂の形態が異なることを確認し,その要因を最大小穂原基数に着目して考察することを目的とした.試験は穂下部小穂の不稔が多く発生する新潟県上越市と対照とした岩手県盛岡市で3作期行った.異なる6つの環境で栽培した六条オオムギの穂...

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Published in日本作物学会紀事 Vol. 94; no. 3; pp. 219 - 229
Main Authors 関 昌子, 島崎 由美, 池永 幸子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.07.2025
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.94.219

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Summary:北陸地域では六条オオムギの穂下部小穂が不稔となる現象が知られ,この地域の減収要因の一つであると指摘されている.冬作物であるオオムギは,冬期に幼穂の分化が開始する.積雪地においては,積雪の有無によって幼穂分化期間の環境が大きく変わる.下部不稔小穂数などの穂の形態が栽培環境によって異なる機構を明らかにする端緒として,本研究では幼穂分化期間を異なる環境で過ごした六条オオムギの成熟期の穂の形態が異なることを確認し,その要因を最大小穂原基数に着目して考察することを目的とした.試験は穂下部小穂の不稔が多く発生する新潟県上越市と対照とした岩手県盛岡市で3作期行った.異なる6つの環境で栽培した六条オオムギの穂は全小穂数や下部不稔小穂数,最大小穂原基数が有意に異なり,下部不稔小穂数はいずれの年も上越が盛岡よりも多かった.最大小穂原基数は幼穂分化期間の積算気温と有意な正の相関が,小穂分化速度とは負の相関があった.小穂生存率は最大小穂原基数と負の相関が認められ,最大小穂原基数が多い程退化小穂数,下部不稔小穂数が増えることで小穂生存率が低下したことが明らかとなった.上越で盛岡よりも下部不稔小穂数が多かった原因は,上越は盛岡と比べて幼穂分化期間の積算気温が高く最大小穂原基数が増えたものの,小穂生存率も低下したため,下部不稔小穂数が多くなったと考えられた.
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.94.219