人への信頼、システムへの信頼、何が異なるのか

本稿の目的は、リスク社会における一般的信頼の役割を明らかにし、社会的知性に裏打ちされた一般的信頼が高度に複雑な社会を生きるために有用な異なるタイプの信頼になりうることを論じることにある。まず、一般的信頼の役割を正確に評価するためには、民主的な価値観にもとづいた信頼と権威主義的な価値観にもとづいた信頼とを区別しなければならない。権威主義的な価値観にもとづいた信頼と異なり、民主的な価値観にもとづいた信頼は、民主社会における一般的信頼を強化し、様々な公共財(市民統治、経済的繁栄、社会秩序など)の供給を可能にする。その一方で、民主的な価値観にもとづいた信頼は、政府の権威への服従を必要としない。民主的な...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in現代社会学理論研究 Vol. 10; pp. 17 - 30
Main Author 数土, 直紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本社会学理論学会 2016
Online AccessGet full text
ISSN1881-7467
2434-9097
DOI10.34327/sstj.10.0_17

Cover

More Information
Summary:本稿の目的は、リスク社会における一般的信頼の役割を明らかにし、社会的知性に裏打ちされた一般的信頼が高度に複雑な社会を生きるために有用な異なるタイプの信頼になりうることを論じることにある。まず、一般的信頼の役割を正確に評価するためには、民主的な価値観にもとづいた信頼と権威主義的な価値観にもとづいた信頼とを区別しなければならない。権威主義的な価値観にもとづいた信頼と異なり、民主的な価値観にもとづいた信頼は、民主社会における一般的信頼を強化し、様々な公共財(市民統治、経済的繁栄、社会秩序など)の供給を可能にする。その一方で、民主的な価値観にもとづいた信頼は、政府の権威への服従を必要としない。民主的な価値観にもとづく信頼をもった人びとは、民主的な価値観に基礎づけられた社会のなかで人への信頼を維持しつつ、それと同時に専門家の権威や政治権力に対する批判精神を持ち続けることになるだろう。
ISSN:1881-7467
2434-9097
DOI:10.34327/sstj.10.0_17