プロボノプログラムがコンサルタントの技能形成に与える影響
本稿では、コンサルタントのプロボノ経験を二つの活動システムの相互作用と捉え、その中で拡張的学習が生まれるかについて分析した。分析の結果、以下の3点が明らかになった。第一に、はじめに人事部へのインタビューから、コンサルタントの人事制度上のキャリアを把握した。コンサルタントは、管理能力や折衝能力が求められるマネージャーへの昇進のハードルが高い。キャリアの壁を乗り越えなければ、昇進が停滞するか、もしくは企業を去るかという選択を迫られる。この壁を乗り越えるための育成プログラムとしてプロボノ活動参加制度が機能している。第二に、コンサルティングとプロボノの活動システムの比較を行い、活動理論の構成諸要素(主...
        Saved in:
      
    
          | Published in | イノベーション・マネジメント Vol. 17; pp. 39 - 57 | 
|---|---|
| Main Authors | , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
    
        31.03.2020
     | 
| Subjects | |
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 1349-2233 2433-6971  | 
| DOI | 10.24677/riim.17.0_39 | 
Cover
| Summary: | 本稿では、コンサルタントのプロボノ経験を二つの活動システムの相互作用と捉え、その中で拡張的学習が生まれるかについて分析した。分析の結果、以下の3点が明らかになった。第一に、はじめに人事部へのインタビューから、コンサルタントの人事制度上のキャリアを把握した。コンサルタントは、管理能力や折衝能力が求められるマネージャーへの昇進のハードルが高い。キャリアの壁を乗り越えなければ、昇進が停滞するか、もしくは企業を去るかという選択を迫られる。この壁を乗り越えるための育成プログラムとしてプロボノ活動参加制度が機能している。第二に、コンサルティングとプロボノの活動システムの比較を行い、活動理論の構成諸要素(主体、対象、媒介する人工物、コミュニティ、ルール、分業)において異なる特徴を持つことを確認した。異なることが拡張的学習を生み出すと考えられる。第三に、活動システムの違いが生み出す四つの矛盾に直面したコンサルタントは、普段の本業を振り返りつつ、経験を概念化し、新しいモデルを提示しようとしていた。結果として、成長に結びつく行動や態度の変容を示していた。なお、少ない事例ながら拡張的学習の程度に関しては、個人差も確認された。その理由としてプロボノの実践の中で生み出されるトラブルに対して、疑問や批判ができることの重要性が示唆される。矛盾の認識が深ければ、拡張的学習の効果が大きいと推測される。 | 
|---|---|
| ISSN: | 1349-2233 2433-6971  | 
| DOI: | 10.24677/riim.17.0_39 |