変分経路積分分子動力学法で探るプロトン化水クラスターの量子構造ゆらぎ

本研究では,プロトン化水クラスター H O H の量子力学的な構造ゆらぎを,変分経路積分分子動力学(VPIMD)法を用いて詳細に調べた.調和近似と数値的な厳密解であるVPIMD 法の結果を比較することにより,安定性に関する非調和性からの寄与の重要性を示した.特に ≥3のクラスターでは,基底状態の波動関数が複数のエネルギー極小構造を跨いで分布し,配位空間内で非局在化していることを明らかにした.これは特定の安定構造まわりの非調和性を考慮するだけではプロトン化水クラスターの性質を定量的に記述できないことを意味している.また,水素を重水素D や三重水素T に置換することにより同位体効果を議論した....

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Published inアンサンブル Vol. 22; no. 1; pp. 22 - 30
Main Authors 三浦, 伸一, 杉澤, 宏樹, 井田, 朋智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 分子シミュレーション学会 31.01.2020
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ISSN1884-6750
1884-5088
DOI10.11436/mssj.22.22

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Summary:本研究では,プロトン化水クラスター H O H の量子力学的な構造ゆらぎを,変分経路積分分子動力学(VPIMD)法を用いて詳細に調べた.調和近似と数値的な厳密解であるVPIMD 法の結果を比較することにより,安定性に関する非調和性からの寄与の重要性を示した.特に ≥3のクラスターでは,基底状態の波動関数が複数のエネルギー極小構造を跨いで分布し,配位空間内で非局在化していることを明らかにした.これは特定の安定構造まわりの非調和性を考慮するだけではプロトン化水クラスターの性質を定量的に記述できないことを意味している.また,水素を重水素D や三重水素T に置換することにより同位体効果を議論した.
ISSN:1884-6750
1884-5088
DOI:10.11436/mssj.22.22