丸山論文に対するEditorial Comment 日本上陸?

急性心筋炎の原因はウイルス感染が多い. 一方, 心筋炎の中で起因ウイルスを確定できる症例は少ない. 古くから心筋炎の起因ウイルスは, コクサッキーウイルスを代表とするエンテロウイルス群, アデノウイルス, ヘルペスウイルスなどが多いと報告されてきた. 実際, 急性心筋炎に先行する感染症状としては下痢, 嘔吐, 食欲不振などの消化器症状が多い. ところが, 2003年, ドイツの研究者によって心筋炎および心筋症患者の心筋生検標本からパルボウイルスB19(PVB19)が高頻度に検出されるとの報告がなされた. 10年前までは全く報告がなかったにもかかわらず, その後もドイツの複数の施設から報告が続き...

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Published in心臓 Vol. 43; no. 10; p. 1366
Main Author 小玉, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2011
日本心臓財団
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.43.1366

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Summary:急性心筋炎の原因はウイルス感染が多い. 一方, 心筋炎の中で起因ウイルスを確定できる症例は少ない. 古くから心筋炎の起因ウイルスは, コクサッキーウイルスを代表とするエンテロウイルス群, アデノウイルス, ヘルペスウイルスなどが多いと報告されてきた. 実際, 急性心筋炎に先行する感染症状としては下痢, 嘔吐, 食欲不振などの消化器症状が多い. ところが, 2003年, ドイツの研究者によって心筋炎および心筋症患者の心筋生検標本からパルボウイルスB19(PVB19)が高頻度に検出されるとの報告がなされた. 10年前までは全く報告がなかったにもかかわらず, その後もドイツの複数の施設から報告が続き, ドイツでは, 心疾患症例の心筋から検出されるウイルスの中でPVB19が最も頻度が高くなっている. 日本循環器学会「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2009年改定版)」の改定作業の中で, PVについてどのように言及すべきか話題になったが, ヨーロッパの一部の地域で検出されているのみで, わが国では, まだ報告がないという理由で「心筋炎を惹起するウイルス」一覧の末尾に記載するにとどめることとなった1). 丸山論文は, わが国のPVB19心筋炎の1例目ということになろう. ドイツでの蔓延から10年遅れて, いよいよPVB19の日本上陸であろうか.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.43.1366