興味深い一過性左室内非同期運動を呈したシベンゾリン中毒症例の検討

症例は76歳, 男性. 肥大型心筋症, 発作性心房細動と診断され, 近医で発作性心房細動に対してシベンゾリン150mg/日を投与されていた. 某日, 全身脱力感が出現し, 座位不能となったため前医に救急搬送されたが, 完全左脚ブロック型心電図を呈したショック状態であり, 当院へ転院搬送となった. 救急車内にて心肺停止となり, 心肺蘇生が開始された. 当院到着時は無脈性電気活動を呈しており, 心肺蘇生継続により心拍再開, その直後の心電図で完全左脚ブロックとQT・QTc時間の延長, 心エコーで著明な左室内非同期運動が認められ, 低血圧が遷延した. 来院時のシベンゾリン血漿中濃度は1,466ng/...

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Published in心臓 Vol. 43; no. 1; pp. 87 - 92
Main Authors 川尻, 剛照, 藤岡, 研佐, 多田, 隼人, 坪川, 俊成, 林, 研至, 井野, 秀一, 藤野, 陽, 内山, 勝晴, 坂元, 裕一郎, 舛田, 英一, 山岸, 正和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2011
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.43.87

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Summary:症例は76歳, 男性. 肥大型心筋症, 発作性心房細動と診断され, 近医で発作性心房細動に対してシベンゾリン150mg/日を投与されていた. 某日, 全身脱力感が出現し, 座位不能となったため前医に救急搬送されたが, 完全左脚ブロック型心電図を呈したショック状態であり, 当院へ転院搬送となった. 救急車内にて心肺停止となり, 心肺蘇生が開始された. 当院到着時は無脈性電気活動を呈しており, 心肺蘇生継続により心拍再開, その直後の心電図で完全左脚ブロックとQT・QTc時間の延長, 心エコーで著明な左室内非同期運動が認められ, 低血圧が遷延した. 来院時のシベンゾリン血漿中濃度は1,466ng/mLと中毒域であったが, 薬剤中止による血漿中濃度低下とともに次第にQRS幅, QT・QTc時間は短縮した. また, 心エコー上の左室内非同期運動は改善し, 血圧の正常化が得られた. シベンゾリン中毒により心肺停止にいたったものと考えられ, 蘇生後の経過を観察し得た症例として興味深い.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.43.87