周術期栄養管理を行った蛋白漏出性残胃癌の1例

症例は70歳の女性で幽門側胃切除後,経過観察中に下腿浮腫,低蛋白血症を指摘された.上部消化管内視鏡検査で残胃に約60mmの分葉状に隆起する1型腫瘍を認め,99mTc標識ヒト血清アルブミンシンチグラフィにて腫瘍からの蛋白漏出が確認されたため,蛋白漏出性残胃癌と診断した.残胃に発生した蛋白漏出性胃癌は,検索した限り報告例がなく,極めてまれであった.栄養状態の改善を目的に術前から NSTが介入し栄養管理を行った.術前は,栄養調整食品を用いた経口栄養と中心静脈栄養を併用した.残胃全摘術,膵体尾部,脾臓合併切除術を施行し上部小腸に栄養チューブを留置した.残胃には表層の多くを壊死物質に覆われた分葉状に隆起...

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Published in日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol. 30; no. 2; pp. 709 - 711
Main Authors 鈴木, 英二, 春原, ゆかり, 小林, 宏正, 関, 仁誌, 町田, 典子, 鈴木, 政哉, 小林, 香, 小池, 泰子, 馬島, 園子, 小松, 千紘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会 2015
Subjects
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ISSN2189-0161
2189-017X
DOI10.11244/jspen.30.709

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Summary:症例は70歳の女性で幽門側胃切除後,経過観察中に下腿浮腫,低蛋白血症を指摘された.上部消化管内視鏡検査で残胃に約60mmの分葉状に隆起する1型腫瘍を認め,99mTc標識ヒト血清アルブミンシンチグラフィにて腫瘍からの蛋白漏出が確認されたため,蛋白漏出性残胃癌と診断した.残胃に発生した蛋白漏出性胃癌は,検索した限り報告例がなく,極めてまれであった.栄養状態の改善を目的に術前から NSTが介入し栄養管理を行った.術前は,栄養調整食品を用いた経口栄養と中心静脈栄養を併用した.残胃全摘術,膵体尾部,脾臓合併切除術を施行し上部小腸に栄養チューブを留置した.残胃には表層の多くを壊死物質に覆われた分葉状に隆起する大型の病変がみられ,病理組織学検査では病変部の表層を中心に多くの部分に凝固壊死を認め,出血や,好中球,リンパ球などの炎症細胞浸潤が目立っていた.術後は早期経腸栄養療法を行った.術後経過は良好で,低蛋白血症,下腿浮腫は速やかに改善した.周術期栄養管理が有効であった蛋白漏出性残胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
ISSN:2189-0161
2189-017X
DOI:10.11244/jspen.30.709