その他の包括利益と持分

会計における利益観が収益費用利益観から資産負債利益観にシフトした結果として、財務業績の指標値として当期純利益とともに包括利益が重要な地位を占めてきた。包括利益とは、取引およびその他の経済的事象(資本取引を除く)から生じる一定期間における事業体の純資産の変動額である。一定期間の包括利益には、当期損益にプラスされて当該期間に認識された「その他の包括利益」(OCI)も含まれる。わが国では、「その他の包括利益」として「その他有価証券評価差額金」、「繰延ヘッジ損益」、「退職給付に係る調整額」、「為替換算調整勘定」が「損益及び包括利益計算書」または「包括利益計算書」において表示されている。これらの項目は、...

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Published inイノベーション・マネジメント Vol. 18; pp. 1 - 24
Main Author 菊谷, 正人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 31.03.2021
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ISSN1349-2233
2433-6971
DOI10.24677/riim.18.0_1

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Summary:会計における利益観が収益費用利益観から資産負債利益観にシフトした結果として、財務業績の指標値として当期純利益とともに包括利益が重要な地位を占めてきた。包括利益とは、取引およびその他の経済的事象(資本取引を除く)から生じる一定期間における事業体の純資産の変動額である。一定期間の包括利益には、当期損益にプラスされて当該期間に認識された「その他の包括利益」(OCI)も含まれる。わが国では、「その他の包括利益」として「その他有価証券評価差額金」、「繰延ヘッジ損益」、「退職給付に係る調整額」、「為替換算調整勘定」が「損益及び包括利益計算書」または「包括利益計算書」において表示されている。これらの項目は、価格変動・金利変動・為替相場変動のように、経営者がコントロールできない外部的経済事象から生じている。本稿では、包括利益および「その他の包括利益」(OCI)の本質・特徴を解明した上で、「その他の包括利益累計額」の会計処理(とりわけ表示方法)を理論的に考察する。結論として、バッター資金会計論における持分概念(資産に対する拘束)に基づいて、「その他の包括利益累計額」は「企業体持分」(「資金持分」)として表示する。
ISSN:1349-2233
2433-6971
DOI:10.24677/riim.18.0_1