超高齢社会における孤食と共食 ソーシャル・インクルージョンの観点から

本稿では、高齢者のソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)について、食と健康のコホート研究から、特に孤食と共食を中心として論じる。高齢期の孤食は、心理的健康度の低さや摂取食品の多様性の乏しさに関連することが明らかになり、孤食であることは高齢者の健康上のリスク要因の一つであると考えられる。しかしながら、高齢者の独居が避けられない日本社会において、共に食べる場を家庭内にとどめるには限界があり、また、通所介護(デイサービス)などの制度でも包摂されない実態も浮かび上がってきた。2018 年の介護報酬改定を受けて、要支援高齢者(要支援1、2 の認定者)がデイサービスを利用できないという状況が起こってい...

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Published in未来共創 Vol. 7; pp. 99 - 117
Main Authors 野瀬, 光弘, 松林, 公蔵, 木村, 友美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立大学法人 大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター 2020
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ISSN2435-8010
DOI10.50829/miraikyoso.7.0_99

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Summary:本稿では、高齢者のソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)について、食と健康のコホート研究から、特に孤食と共食を中心として論じる。高齢期の孤食は、心理的健康度の低さや摂取食品の多様性の乏しさに関連することが明らかになり、孤食であることは高齢者の健康上のリスク要因の一つであると考えられる。しかしながら、高齢者の独居が避けられない日本社会において、共に食べる場を家庭内にとどめるには限界があり、また、通所介護(デイサービス)などの制度でも包摂されない実態も浮かび上がってきた。2018 年の介護報酬改定を受けて、要支援高齢者(要支援1、2 の認定者)がデイサービスを利用できないという状況が起こっている。高齢者を支援するための社会保障制度は、そのサービスを通じて高齢者に居場所を与える目的もあるが、一方で、地域社会から切り離してしまうという危険性も孕んでいる。そこで本稿では、家族、制度に依存しない、地域における草の根的な共食の事例を紹介し、食を通じた高齢者のソーシャル・インクルージョンの可能性について考察する。
ISSN:2435-8010
DOI:10.50829/miraikyoso.7.0_99